美術館の歩みを展覧会で振り返る(昭和59(1984)年)

当美術館は4月1日(金)より、施設改修・増築のための長期休館に入りました(平成32(2020)年3月までの予定)。休館中も、当館はさまざまなイベントや作品移動展示等を実施予定であり、それらの情報はこのブログでも順次ご紹介してゆく予定です。
またイベントが無い期間は、不定期連載の特別企画として、滋賀県立近代美術館が昭和59(1984)年の開館から長期休館までの間に実施してきた210本の企画展を展覧会チラシを通して振り返り、33年間の歩みを回顧してゆきたいと思います。
まずは開館の年、昭和59(1984)年から。

滋賀県立近代美術館は昭和59(1984)年8月26日(日)にオープンいたしました。中途半端な日に思われるかも知れませんが、これは翌8月27日から第1回世界湖沼環境会議(LECS84)が滋賀県大津市で開かれ内外の注目を集めていたのと、同会議の開会式にご臨席の皇太子殿下・同妃殿下(現・天皇皇后両陛下)が当美術館を視察されることになったのに合わせたものです。開館前日の8月25日(土)には開館記念式典が開かれ、小倉遊亀画伯や、芸大美術作家のジャン・ティンゲリー氏をはじめ400名におよぶ関係者臨席の中、盛大に式典が催されました。

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開館記念展 20世紀彫刻の展望 −ロダンからクリストまで−1984年08月26日─1984年10月07日  開催日数:37日  観覧者数:13,983人
当館の開館記念展は、公立美術館が正面から取り組むということで当時注目を集めていた現代美術、それも展示に手間のかかる彫刻・立体作品に的を絞り、28作家80点の作品で現代彫刻1世紀の歩みを振り返ろうとする、意欲的な企画でした。「かたちとしての彫刻」「構造としての彫刻」「場としての彫刻」「オブジェ」の4つの分類により、とかく馴染みの乏しい現代彫刻への入門編ともなっていました。スイスの作家ジャン・ティンゲリー氏が自ら設置した、動いて音を奏でる彫刻「地獄の首都No.1」が注目を集めました。
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開館記念 小倉遊亀回顧展1984年10月13日─1984年11月11日  開催日数:26日  観覧者数:19,235人
開館2本目の企画展は、滋賀県大津市出身の近代日本画の巨匠・小倉遊亀画伯を取り上げたもので、画伯の代表作102点を「人物画」と「静物画」の2つに分けて紹介した、大規模な回顧展でした。この展覧会も「開館記念展」のひとつとして位置付けられ、当館の作品収蔵方針のうち「院展を中心とした近代日本画」と「郷土滋賀県ゆかりの美術」を代表する役割を果たしました。滋賀近美=小倉遊亀、という公式が定着するきっかけとなった展覧会でもあります。
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ドローイングにみる英国現代彫刻展1984年12月08日─1985年01月06日  開催日数:19日  観覧者数:1,076人
2つの開館記念展に全力投球した後、来館者の少ない冬場に向けて小規模な企画展を2本続けて開催いたしました。その第1弾はブリティッシュ・カウンシルのコレクションによるもので、イギリスの現代美術界で活躍中の中堅立体作家11名の、ドローイング18点を展示するものでした。ドローイング以外にも、トニー・クラッグやバリー・フラナガン、ディヴィッド・ナッシュら5人の作家の立体作品6点も参考作品として展示いたしました。
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沢 宏靱 素描展 同時開催:滋賀の風景を描く−所蔵品の中から1985年01月12日─1985年02月11日  開催日数:26日  観覧者数:2,502人
冬場の企画展第2弾は、滋賀県長浜市出身で壮大なスケールの風景画を描くことで知られる日本画家、沢宏靱(さわ・こうじん)を取り上げたものでした。ただの回顧展ではなく、本画とそこに至るまでの素描や下絵を併せて展示し、本画に至るまでの過程と努力の跡を見ていただこうというコンセプトのもと、本画18点と素描・下絵97点を展示するというものでした。
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現代芸術の予言と魔術 マン・レイ1985年03月02日─1985年04月07日  開催日数:31日  観覧者数:8,465人
開館初年度の終わりに、一般の美術ファンに向けた巡回展(神奈川近美・三重県美を巡回)を開催いたしました。写真家およびオブジェ作家として有名なシュールレアリスムの巨匠、マン・レイの芸術を、写真300点余り、オブジェ41点、版画38点など併せて総作品数約400点を通して紹介するという、日本で初めての大規模な回顧展となりました。展覧会のターゲットは当館の開館記念展のそれからは少しずれており、一般的な西洋近代美術ファンの中でも少しとんがった層を対象としていたと言えましょうか。当館の認知度を高めるのに役立った企画展でした。
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