「装いとしつらえの四季」展 関連イベント 講演会「染め」のお話 を開催しました。

さる5月18日(日)、志村ふくみさん、志村洋子さんを講師に迎え、講演会「染め」のお話を開催しました。事前申込制だった当イベントには、多くの方々にご応募いただき、当日は、当選された約160名の方に、ご参加頂きました。

志村ふくみさん(左)と洋子さん(右) スライドを見ながらのお話し


講演は、ふくみさんと洋子さんお2人の、リレートークのかたちで行われました。
正倉院宝物の織物の紹介から始まり、それらの起源となるような古い染織品を、トルコをはじめ中近東の国々へおもむき、探しもとめたものの、あまり見つからず、後に、そうした中近東の古い染織品が、日本各地の美術館やご近所のお寺に大切に伝えられていたことが分かったそうです。また、當麻寺に伝わる當麻曼荼羅や、法隆寺夢殿に伝わるササン朝ペルシャの織物、伊勢神宮遷宮等を引き合いに出され、日本には、美しいものを大切に、何世代にもわたって伝えていく文化があることを話されました。

また、学校(アルスシムラ)を開講された背景について、お2人がそれぞれ思いを語られました。洋子さんは、日本人は、八百万(やおよろず)の神々、すなわち自然の恩恵を受けながら永い時代生きてきたけれど、いま、その手が離れてしまった感覚がある、昔には戻れないけれど、人と自然が再び手を結ぶ新しい方法を考えていかなければならない、そのために、色を通して私たちが学んできた色々なことを伝えたい、と仰いました。

ふくみさんは、民藝運動の指導者、柳宗悦に師事しながらも、個人の作家として制作することと、無名の職人による手仕事に美を見いだす民藝運動の思想に葛藤を感じていたことを語られていました。柳氏に、「それは民藝ではない」と言われても、制作を続けたふくみさん。「感動し、したいと心動かされたことを、やらなきゃいられない、それが人間だと思う」と語られた言葉に、ひたむきに染織を続けられてきた、情熱の一端を見るような気がしました。ご自身が染織に込めてきた思いを、少しでも広く世界に伝えたい、それが開講を決意した背景にあることをお話されました。

そのほか、ふくみさんと洋子さんお2人の最新作や、美術館の近隣で採れた冬青(そよご)で染めた糸、染めの工程写真、近世絵画の自由な空気のなかに息づく着物等々、興味深いお話をたくさん頂き、約1時間半の講演があっという間に終わりました。志村ふくみさん、洋子さんはじめ、関係者の方々、ご来場いただいた皆様には深く、御礼申し上げます。
冬青(そよご)で染めた糸(2人の女性が手に持っている)の現物も見せていただきました。



冬青(そよご)で染めた糸(2人の女性が手に持っている)の現物も見せていただきました。



※志村ふくみさんのお話に出てきた民藝運動の指導者、柳宗悦の展覧会を、今秋当館で開催します。当展覧会とあわせて、ぜひご観覧下さい。
柳宗悦展—暮らしへの眼差し—」 2013年10月12日(土)〜11月24日(日)
一般:950円 高大生:650円 小中生:450円