平成25年度「わたし流・作品スケッチ大会」審査結果発表


常設展示室に展示中の作品を、子どもたちに自由に模写してもらう夏のイベント「生まれ変われ名画 わたし流・作品スケッチ大会」。今年は7月14日(日)・15日(月・祝)・20日(土)・21日(日)の4日間にわたり開催し、104名の小学生および幼児の参加がありました。
これらの参加者から応募いただいた103点(1名は応募辞退)の作品は、2013年8月13日(火)から18日(日)まで、当館のギャラリー展示室で展示いたします。これに先立ち、美術館のスタッフによって優秀作品の審査を行い、以下に挙げる7点の作品の入選が決定いたしました。

見事グランプリを受賞したのは、横山柊吾さん(6年)の作品『海上工事中』でした。
竹と和紙を用いて軽やかな凧や繊細な工芸作品を連想させる作品を作り続けている現代作家・北山善夫の作品「何か言いたかったの。」を、形態をそのまま、スケールを海上工事中の建造物にパワーアップして生まれ変わらせた、イマジネーション豊かなユニークな作品です。細部に手を抜かない詳細な描写も評価されたようです。なお横山柊吾さんは昨年に引き続いての、2年連続グランプリ受賞となります。

準グランプリは、長谷川舞さん(4年)の『なんでも私に聞きなさい』。京都画壇の巨匠・山元春挙が、昔の中国人たちが想像した仙女たちのリーダー、西王母を描いた作品を元に、威厳とエレガントさを兼ね備えた今風の仙女に生まれ変わらせた作品です。野添平米の「松竹梅小禽図」の要素も取り込み、パステルトーンの色彩と相まってポップな仕上がりを見せています。


技術的に優れた作品に送られる「テクニック賞」、今年の受賞は次の3人でした。

伴菊花さん(4年)の『カラフルなはいれつ』は、山田正亮による格子模様の抽象画作品「Work EP-26」を換骨奪胎し、自分だけのオリジナル作品に再構成したユニークなもの。色彩感覚の巧みさだけでなく、二つに折った紙の間に絵具をはさんで閉じることで不思議な模様を作り上げる「デカルコマニー」の技法を駆使して、筆では表現できないような巧妙な表現を試みた点も評価されました。

水谷莉子さん(6年)の『にぎやかな世界』は、山形博導(ヒロ・ヤマガタ)がネオンのきらめく夜の町のメルヘンを描いた「ネオン」を元に、細部を大胆にアレンジしてポップで強烈な印象を与える清新な作品に仕上げたもの。女の子らしい感性に溢れた楽しい作品ですが、文字のレタリングの見事さにも注目したいですね。

岡本さほさん(3年)の『さほの心』は、山元春挙に師事した日本画家・杉本哲郎による「世界十大宗教」の中の一点「マハヴィーラ (ジャイナ教)」を元にしたもの。徹底した不殺生を戒律とするジャイナ教の開祖、マハヴィーラが動物たちに囲まれている姿を、そのままお下げ髪の自分自身の自画像に変えてしまった大胆な作品です。金や銀の色紙を巧みにコラージュしてきらびやかな画面をうまく作り上げています。


ユニークで楽しい表現に与えられる「ユニーク賞」の受賞は、次の2人でした。

今井敦也さん(6年)の『未来のはかせとてんじしつ』は、展示室に監視員や観客の偽物として並べられた今井祝雄の等身大の人形作品「ヴォワイヤン」を、美術館のイベント担当「アートはかせ」と重ね合わせ、北辻良央「桜・贈物」や朝倉俊輔「プラント」など、現代美術の展示室に飾られていた別の作品と組み合わせて、美術館の展示室を再現した作品。博士の表情など、ユーモアに溢れたタッチがいい味をかもし出しています。「2050年度スケッチ大会」と書かれているということは、本イベントがまだまだ未来に続いてゆくということでしょうか。嬉しい限りです。

伴鼓太郎さん(6年)の『ある日の美術館』も、今井祝雄の「ヴォワイヤン」を中心にして美術館の展示室を再現した作品。こちらはバックに、根岸芳郎の抽象画「85-11-1」が飾られています。鮮やかな黄色の「ヴォワイヤン」と、背後のパステル調の繊細な色彩との調和が見事です。この作品の中にもこっそり、アートはかせが登場していますね。


これら優秀作を含む103点の作品は、8月13日(火)から18日(日)まで、ギャラリー展示室で展示いたします。子どもたちの新鮮な感性に溢れた作品群を、ぜひご覧下さい。