来週から新しい常設展示「生命の気配」が始まります

■生命の気配
雄大な大地や、咲き誇る花々、風にそよぐ木々、生命力にみなぎる動物たち。生命の表現は長く美術作品の主題として用いられ、人々の心を魅了し続けてきました。この春、常設展示室の現代美術部門は好評開催中の「反芸術の世紀」(3月29日(日)まで)に代わり、「生命の気配」と題して、植物をはじめとする自然の造形にモチーフを求めたり、生命的フォルムを用いている現代の造形作品ばかりを集めて展示いたします。
20世紀の美術は単純で幾何学的な抽象造形を追求する一方で、不定形の生物的・有機的フォルムを探求する「バイオモルフィズム(生命的形態論)」の流れを脈々と伝えてきました。20世紀前半を代表するフランスの巨匠アンリ・マチスは、卓越したデッサン力で植物の装飾的意匠の中に生命のエネルギーを活写し、また切り紙を用いて生命感溢れる抽象造形を築き上げました。バイオモルフィズムの流れはやがて、人間の無意識を探求するシュールレアリスムに引き継がれ、さらにアメリカ抽象表現主義の先駆者となる、ジャクソン・ポロックの作品の中にも姿を見せます。
一方で生物的なモチーフは、機械的・非人間的な効率性を重視する現代文明に対するアンチテーゼとして、現代の芸術家たちに採用されることがあります。現代日本の作家の中にも、自然との交感をテーマに生物的なフォルムを採用する者や、外界を見る人間の視覚をテーマに自然のモチーフを用いる作家たちが数多くいます。樹冠や木々の影などをソフトフォーカスやスローシャッターを駆使して撮影し、柔らかく曖昧な視覚世界を作り上げる秋岡美帆や、水辺の植物の写真を元に徹底したスーパーリアリズムによって人間の視覚の奇妙さを暴く岡田修二の油彩画などは、その代表だと言えるでしょう。

▲秋岡美帆「そよぎ」


常設展示「生命の気配」 3月31日(火) − 6月28日(日)
 「新収蔵品を中心に」3月10日(火)─5月6日(水)開催、「滋賀の工芸」5月8日(金)─6月28日(日)開催と併せてご覧いただけます。
休館日:毎週月曜日(月曜が祝日・振替休日の場合は開館し、翌日休館)
観覧料(共通):一般 500円(400円))、高大生 300円(240円)、小中生 無料 ( )内は20名以上の団体料金。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。
※毎日、午後2時から美術館サポーターによるギャラリートークを行います。