「ドゥシャン・カーライ展の会場から その3

4月24日(土)から始まった「ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち」展。その会場の様子を、もう少し見てゆくことにします。

カーライは基本的には絵本作家であり、この展覧会もほとんどの部分は「絵本原画の展示」に充てられています。けれどもカーライという作家は、決して絵本という狭い世界だけに安住するような存在ではありません。彼は画家・版画家・デザイナー・アニメ製作者・教育者など、多様な側面を持つ多才なマルチ・アーチストであり、本展においてもそういった様々なカーライの横顔に照明を当てた多角的な展示を行っています。

中でも来場者を驚かせるのが、画家、版画家としてのカーライの側面。カラフルでファンタジックな絵本の世界とは異なり、北方ルネサンスの画家ヒエロニムス・ボッシュの怪奇な迷宮世界をほうふつとさせるような、時にグロテスクで時に重苦しい、ヨーロッパの闇の部分を継承する表現が展開されているのです。楽しい作品を期待されて来られたお子様連れのお客様の中には、思わず「しまった!」と思われた方もおられるかも知れません。
ですがこうした闇の側面は、カーライだけでなく現在の東欧の絵本を語る上で無くてはならない要素です。彼の絵本を見る前に、ぜひこうした彼の側面にも触れていただきたいと思います。