「夏休み子ども美術館」の見どころ紹介 その3

今月末の6月29日(火)から始まる「夏休み子ども美術館 アートのぶつブツえん」。その展示作品の中から目玉を紹介するシリーズの、第3回です。今回はよく似たテーマで描かれた作品どうしを比較して展示する、楽しい鑑賞方法のご提案です。

この展示の出品作品には、よく似たテーマで描かれた作品どうしをわざと並べて展示してあるコーナーがいくつかあります。上の写真は神様の使いと言われる白い狐をテーマにした作品2点で、右が岸竹堂の「秋夜白狐図」、左が山元春挙の「春夜白狐図」です。タイトルまでよく似ていますが、左側の作品がゆっくりとした動きで周囲をうかがう野生動物としてのキツネを表わしているのに対し、右の作品は動きのあるポーズで、神の使いにふさわしい神秘性を持ったキツネの姿をうまく表現しています。

また上の写真は、朝顔を描いた作品どうしのペアです。上は堅山南風の日本画「銷夏帖 朝顔」、下は野口謙蔵の油絵「蓮とあさがお」。どちらも生け垣にからみついて色とりどりの花を咲かせる朝顔の姿を描いたものですが、作品から受ける印象はまったく違います。上の作品が澄んだ明るい色彩で、爽やかな朝の空気を感じさせるのに対し、下の作品はこってりとした色彩と重厚なタッチで、池の水面に映った朝焼けの光を描き、まだ明け切らぬ夏の朝のけだるげな空気をうまく表現しています。日本画と油絵という違いがあるとはいえ、同じモチーフを描いたとは思えないくらい印象の違う2点です。


これらの展示のほか、今回の展示では十二か月それぞれを代表する動植物を並べてカレンダーのように表現する「月次絵(つきなみえ)」と呼ばれる作品も展示しています。上の写真は幕末の日本画家、中島来章が描いた「十二ヵ月図」。1月は松にタンチョウヅル、2月は梅にウグイス、といった具合に12カ月それぞれを描いた絵が12枚、屏風になって並んでいます。太陰暦の時代に描かれた作品なので、太陽暦を使っている現在の私たちの季節感覚とは1ヶ月ほどズレがあります(作品の1月=私たちの感覚では2月)が、描かれている動植物は、現代の私たちにもなじみ深いものばかり。
欲しいものは季節を問わず手に入れることができる現代の私たちは、本来の四季が持っている季節の感覚を失いかけています。こうした楽しい作品を見ながら、日本の四季の美しさに思いをはせ、自然を見つめ直すきっかけにしていただけたらと思います。

「夏休み子ども美術館 アートのぶつブツえん」
会期:6月29日(火)−8月27日(日)
観覧料:一般 450円(360円)、高大生 250円(200円)、小中生 無料
    ( )内は20名以上の団体料金。企画展の観覧券で常設展も観覧できます。