夏休み子ども美術館、ヒミツをいっぱいかくして今年も開催!


もうすぐ夏休み。県立近代美術館では毎年夏に、子どもたちや初心者を対象とした美術入門編の展示『夏休み子ども美術館』を開催しています。6月28日(火)から始まる今年の「夏休み子ども美術館」のテーマは「アートはヒミツのかくれんぼ」。当館の収蔵品(日本画・郷土美術と現代美術の作品)の中からえりすぐった62点の作品をもとに、作品の中にかくされた謎や秘密を、探偵になって解き明かしてゆくという趣向で開催いたします。展示作品の脇には必ず、作品に関連したクイズが用意され、それを解きながら会場を回ることによって、知らず知らずのうちに作品を観察する目が鍛えられてゆくように工夫されています。また無料配布の書き込むワークシートも用意し、小さなお子さまも飽きずに展示を見ることができるよう、工夫してあります。
ここでは展覧会の案内をかねて、展示作品の中からヒミツを持った作品をいくつか、ご紹介してゆきましょう。

まずは簡単な問題から。上の作品は明治時代に活躍した女性の画家、野口小蘋(のぐち・しょうひん)の作品「蓬莱仙境図(ほうらいせんきょうず)」です。むかし中国人が東の海の彼方にあると考えた、不老不死の仙人たちが住む理想の島、蓬莱山(ほうらいさん)を想像して描いた日本画です。実はこの作品の中には、おめでたいものがたくさん描かれているのですが、見つけることができるでしょうか? まずは長寿のシンボルである、ツルとカメの姿を見つけてください。

いかがでしょうか。ツルとカメは左の図で示した場所に描かれています。それでは続いて、セットで松竹梅と呼ばれる、マツ、タケ、ウメの3種類の植物を探してみましょう。

正解は右の図で示された場所です。マツはよく目立ちますが、ウメの木がちょっとわかりにくかったかも知れませんね。今回の展覧会にはこのように、絵の中に隠すようにして描かれたものを探し出す問題がいっぱい用意されています。

続いての問題。上の写真は森村泰昌(もりむら・やすまさ)という現代の作家が作った「6人の女嫁」という作品で、これは実はイギリスの画家ロセッティが今から150年ほど前に描いた油絵作品「最愛の人」(下の写真)を真似て、自らを撮影した写真をコンピューターで加工して作った作品です。

ですからこの作品の中に登場している人物は、みんな森村さんが扮したもので、同じ顔をしています。さて、タイトルによるとこの作品の中には六人のお嫁さんがいるはずですが、いったいどこにいるのでしょうか?確かに作品の中には6人の人物がいますが、いちばん下にいるのは黒人の小姓で、お嫁さんとは違うようです。いったい6人目のお嫁さんはどこにいるのでしょうか?

正解は、黒人の小姓が持っている花束の容れ物をよく見るとわかります。この容れ物、ロセッティの元の作品では円筒形のタンブラー型でしたが、森村泰昌の作品ではなんと、優勝カップになっています。この優勝カップの表面に、パーティーの風景らしきものが映っており(右の写真)、その中にウェディングドレスを掲げた女性の姿が見つかります。実はこの女性こそ、6人目のお嫁さんだったのです。

今度は上の写真を見て下さい。これは京都の町屋を描き続けている現代の日本画家、前田直衞(まえだ・なおえ)の作品「京の宿」で、近又(きんまた)いう料理旅館の玄関先を丁寧に描いた風情溢れる作品です。ではこの旅館の風景は、春夏秋冬、いずれの季節を描いたものでしょうか。
これは簡単ですね。屋根や道に雪がうっすら積もっていることから、冬の風景だとすぐにわかります。では、冬は冬でも何月頃を描いたものでしょうか?

作品の細部をよく観察すると正解がわかります。宿の入り口の上にお正月のしめ飾りが、扉の両脇には簡素な門松が、それぞれ飾られています。このことから、お正月(3が日のいずれか)を描いた作品であることがわかります。また、門灯や部屋の明かりが点いていることから、どうやら早朝の風景らしいこと、雪の上に足跡がまったく残っていないことから、雪が上がったばかりの風景であることなどが、画面を通して読み取れます。

今度は抽象絵画を鑑賞してみましょう。抽象絵画と言っても別に恐れることはありません。上の写真の作品、村井正誠(むらい・まさなり)の「考える男」は、元になるものの形を崩していった結果として抽象的な画面になった、いわゆる「半具象(はんぐしょう)」絵画です。想像力をたくましくして作品をよく観察すれば、抽象的な形になる前の元の姿、すなわち「考える男」の姿が浮かび上がってくるはずです。さて、いったい、どのへんが「考える男」なのでしょうか?

正解と呼べるものが特にあるわけではないのですが、ここでは2種類の解答例(上の図版)をご紹介いたします。同じ「考える人」と言っても、見る人によって、想像する人によって、まったく違うイメージになるところが面白いですね。


このように今回の「夏休み子ども美術館:アートはヒミツのかくれんぼ」では、展示作品のすべてに楽しいクイズが用意されています。子どもだけでなく、大人も楽しめる内容です。ぜひこの機会に家族そろってご来館になり、みんなで楽しいアートの世界を探検してくださいね。
なお会期中、さまざまな子ども向けのイベントを実施いたします。詳細は追って広報いたします。


■常設展示「夏休み子ども美術館:アートはヒミツのかくれんぼ」 6月28日(火)−9月4日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円))、高大生 250円(200円)、小中生 無料 ( )内は20名以上の団体料金。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。
※毎日、午後2時から美術館サポーターによるギャラリートークを行います。