4月3日(火)から新しい常設展示がオープンします


現在開催中の常設展示『詩画の洋画』『日本の前衛』(いずれも4月1日(日)まで)に代わり、4月3日(火)から新しい常設展示『志村ふくみと滋賀の工芸』『《縦》と《横》』が始まります。(いずれも6月24日(日)まで)


■□ 志村ふくみと滋賀の工芸 □■
常設展示室1では、滋賀県近江八幡市出身の紬織の人間国宝・志村(しむら)ふくみを中心として、滋賀県ゆかりの工芸作家たちの作品を集めた展示を行います。
1924(大正13)年、滋賀県近江八幡市に生まれた志村ふくみは、1990(平成2)年に紬織りの優れた技術によって国の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受け、現在もとどまることなく常に新たな作品制作に励んでいる作家です。志村の生み出す作品の魅力は、自然界の植物から丹念に採取して絹糸に移し替えた豊かな色彩のハーモニーにある。特に野山から採取した草木で糸を染めることを「草木の抱く色をいただく」と表現するほど、自然に対して純粋で素直な創作姿勢とり続けているのが特徴です。
本展示では最新作の「源氏物語」シリーズを中心に紬織着物17点と、絹の染め糸など参考資料2点を展示し、滋賀県が生んだ巨匠の業績を振り返ります。また志村ふくみのの他にも、守山市出身の友禅の人間国宝森口華弘(もりぐち・かこう)の友禅着物6点、大津市に住んで鉄耀陶器の研究を続けた人間国宝・清水卯一(しみず・ういち)の陶芸作品5点や、その他、信楽焼の高橋楽斎(たかはし・らくさい)と五代上田直方(うえだ・なおかた)、陶芸の安田全宏(やすだ・ぜんこう)、竹工芸の杉田静山(すぎた・じょうざん)、型絵染の伊砂利彦(いさ・としひこ)、刺繍の酒井栄一(さかい・えいいち)、蝋染の宮崎芳郎(みやざき・よしろう)、羅(ら)織りの宮島勇(みやじま・いさむ)、創耀技(そうようぎ)の山口善造(やまぐち・ぜんぞう)といった、滋賀県ゆかりの工芸作家による作品、計55点を展示し、滋賀県の工芸の全貌を外観いたします。
なお志村ふくみ作品(紬織)と森口華弘作品(京友禅)は、前期(4月3日(火)─5月13日(日))後期(5月15日(火)─6月24日(日))の2期に分けて展示いたしますので、あらかじめご了承下さい。出品作品リストはこちらをご覧下さい。また、「小倉遊亀コーナー」の作品も合わせて展示替えいたします。
図版:(上)志村ふくみ「葵」(前期展示) (下)志村ふくみ「夕顔」(後期展示)

■□ 《縦》と《横》 □■
現代美術部門では、作品の中の「縦と横」という要素に注目し、直角に交差する水平と垂直の線、縦横方向への動きや拡がり、矩形(長方形)や立方体などによって形作られた作品群を集めて紹介し、造形作品における「縦と横」の意味を探る展示を開催いたします。
縦の線と横の線は、造形作品にとってもっとも基本的な要素です。作品を描く紙やキャンバスすら、縦と横の線で囲まれた長方形をしていることがほとんどです。20世紀以降、芸術家たちは造形のもっとも基本的な要素を追い求め、縦と横の線、あるいは縦方向と横方向の動きに注目した作品を数多く生み出しました。抽象絵画の先駆者のひとりであるオランダのピエト・モンドリアン1920年代に確立した、赤青黄の3原色と、垂直・水平の線で形作られたシンプルな抽象絵画のスタイルはその代表的なものです。
1960年代後半に現れたミニマル・アート(最小限芸術)の作家たちは、モンドリアンよりもさらに徹底して造形の基本要素を探求し、これ以上単純化して削れないギリギリの要素を抽出しようと試みました。その結果現れたのが、カール・アンドレ、ドナルド・ジャド、ソル・ルウィットらによる、矩形や立方体など基本形態の単純な繰り返しによる作品群です。
また1950年代に一世を風靡したクリフォード・スティルやバーネット・ニューマン、アド・ラインハートら抽象表現主義の作家たちは、縦と横の線や動きを強調することにより、画面に果てしない拡がりを与えることに成功しました。一方でモーリス・ルイスや日本の元永定正(もとなが・さだまさ)らは、重力によって縦方向に流れ落ちる絵具の効果をうまく活用し、ユニークな作品を生み出しました。
本展示では「造形の基本要素」「基本単位と規則性」「拡がり」「重力」「運動」「グリッド(格子)」の6つのパートにより、現代美術における「縦と横」の意味を考察いたします。出品作品数は計22点です。出品作品リストはこちらをご覧下さい。
図版:ソル・ルウィット「ストラクチャー(立方体として1、2、3、4、5)」


■常設展示「志村ふくみと滋賀の工芸」「《縦》と《横》」 4月3日(火)−6月24日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円)、高大生 250円(200円)、小中生 無料
( )内は20名以上の団体料金。
※企画展の観覧券で常設展もご覧いただけます。