平成24年度「わたし流・作品スケッチ大会」審査結果発表


常設展示室に展示中の作品を、子どもたちに自由に模写してもらう夏のイベント「生まれ変われ名画 わたし流・作品スケッチ大会」。今年は7月15日(日)・16日(月・祝)・21日(土)・22日(日)の4日間にわたり開催し、97名の小学生および幼児の参加がありました。
これらの参加者から応募いただいた98点の作品は、8月7日(火)から12日(日)まで、当館のギャラリー展示室で展示いたします。これに先立ち、美術館のスタッフによって優秀作品の審査を行い、以下に挙げる8点の作品の入選が決定いたしました。

見事グランプリを受賞したのは、横山柊吾さん(5年)の作品『海底魚竜骨』でした。
現代陶芸家・中村康平による、恐竜の化石を思わせる作品「記憶気管」を元に、イマジネーションを働かせて洞窟の中の神秘的な光景を見事に描ききってくれました。茶色とブルー、緑色を組み合わせたユニークな色彩感覚も評価されたようです。

準グランプリは、木村優月さん(1年)の『レインボーなふたり』。虹の作家・靉嘔(あいおう)の版画作品「レインボー・ナイト8」を元に、男の人が宙返りして女の人の身体に重なるダイナミックな画面を、美しい虹のグラデーションを駆使して丁寧に描いてくれました。バックのオレンジ色の鮮やかさも目を引きます。

技術的に優れた作品に送られる「テクニック賞」、今年の受賞は次の3人でした。

小原和真さん(4年)の『雷獣の住み処』は、滋賀県に伝わる伝説を描いた三橋節子の「近江昔話 雷獣」と、山元春挙の風景画「しぐれ来る瀞峡」を組み合わせた作品。雨が降りしきる空のようすを、キラキラ光る色紙を丁寧に切り貼りして表現しています。雨や雷獣(口から稲妻を吐く妖怪)の銀色に、木々の緑を見事にフィットさせているところも見事です。

水谷莉子さん(5年)の『おしゃれな3人組』は、江戸時代の文人画家・紀楳亭(き・ばいてい)が中国の伝説に取材して描いた「高士羅浮仙図」の中の、梅の木の仙女をベースに、抽象画家・萩駿の「UNIVERSE 暁光」のゆるやかにたゆたうヴェールのような曲線を組み合わせて表現した作品です。原画では一人である仙女を3人に増やし、それぞれのファッションにこだわりを見せた点も楽しいですね。

伴鼓太郎さん(4年)の『メカマガモは、森寛斎による十二ヶ月それぞれの花鳥を描いた月次絵(つきなみえ)「十二ヵ月図」の中から、十二月の画面に描かれた松の木とカモをモチーフにしたもの。木も鳥も冷ややかな銀色の絵具で塗ることで、伝統的な花鳥画を現代的なメカ花鳥図として生まれ変わらせています。原色を用いず、画面に使用する色彩を絞り込むことで、銀色の絵具を用いる効果を最大限に生かしています。

ユニークで楽しい表現に与えられる「ユニーク賞」の受賞は、次の3人でした。

中島咲弥花さん(2年)の『おねえさんのごうかなへや』は、戦後の解放感に溢れた若い女性を描いた小倉遊亀の「娘」を中心に、靉嘔「レインボー・ナイト4」や野村仁「正午のアナレマ」など、数々のい作品を散りばめて楽しいお祭り気分で仕上げた作品です。緑とピンクを基調にしたポップな色彩感覚も楽しい作品です。

西村真さん(2年)の『風のかみさまが書いた風』は、琵琶湖に立ったさざなみが「風」という漢字を描くというあり得ない一瞬を造形化した福岡道雄の彫刻作品「風」を元にした作品です。元の作品が真っ黒なFRPで作られているのに対し、西村さんの作品はカラフルで、蝶々が舞う爽やかで楽しげな作品に仕上がっています。

武村篤樹さん(幼児)の『カモとコイ』は、森寛斎の花鳥図「十二ヵ月図」の中から、七月の鯉と、十二月の鴨を取り出して合体させ、千代紙のコラージュを用いた楽しい作品に仕上げたものです。はねる水がコラージュによって画用紙をはみ出してダイナミックに表現されている点がいちばんの見どころですね。


これら優秀作を含む98点の作品は、8月7日(火)から12日(日)まで、ギャラリー展示室で展示いたします。子どもたちの新鮮な感性に溢れた作品群を、ぜひご覧下さい。