9月4日(火)から新しい常設展示がオープンします

現在開催中の常設展示『夏休み子ども美術館 アートはフシギのたからばこ』(9月2日(日)まで)に代わり、9月4日(火)から新しい常設展示『日本美術院の作家たち』(10月28日(日)まで)『物質(モノ)への挑戦』(12月16日(日)まで)が始まります。


■□ 日本美術院の作家たち □■
常設展示室1では、当館の収蔵方針である「日本美術院の名作」の中から、大正時代の作品を中心に当館が誇る名品を選りすぐって展示いたします。

図版上:安田靫彦「飛鳥の春の額田王

明治31(1898)年に学者・岡倉天心(おかくら・てんしん)を中心に創設され、大正3(1914)年、天心の弟子の横山大観(よこやま・たいかん)らによって再興されたわが国最大の在野の日本画団体、その日本美術院が主宰する展覧会「院展」では、近代日本画の歴史を彩る代表作・問題作が次々と発表されました。

主な展示作品としては、当館を代表する名品である安田靫彦(やすだ・ゆきひこ)の「飛鳥の春の額田王」を筆頭に、横山大観の「木菟」、菱田春草(ひしだ・しゅんそう)の「雪の山」、木村武山(きむら・ぶざん)の「花木図」といった院展草創期の重鎮たちの作品から、今村紫紅(いまむら・しこう)の「草蘆三顧」「江頭春」、速水御舟(はやみ・ぎょしゅう)の「遊魚」、小茂田青樹(おもだ・せいじゅ)の「四季草花図」「母子鹿」、安田靫彦の「紅梅」「晴花」、中村岳陵の「黄昏時」「雪路」、冨田溪仙(とみた・けいせん)の「宇治川之巻・木幡」「雲上鶴図」といった、大正期に先鋭的な活動を繰り広げた若い画家たちの作品を取り混ぜて、計21点の作品をご紹介いたします。出品作品リストはこちらをご覧下さい。

図版上:冨田溪仙「雲上鶴図」

図版上:小茂田青樹「母子鹿」
なお合わせて、小倉遊亀コーナーの展示替えも行います。新しい展示作品は、「首夏」「胡瓜」「細雪 挿絵4枚」「童女入浴」「窓辺」「蕪」「アネモネ」「月」「憩う」「少女」「青巒」「葡萄」「紅白紫黄」「半夏生」「白桃」の、計15点です。


■□ 物質(モノ)への挑戦 □■
現代美術部門では、当館の収蔵方針である「アメリカと日本を中心とした現代美術」の中から、現代美術の特徴のひとつである「物質性へのこだわり」に着目し、絵具や土など素材の物質感を前面に押し出した作品や、廃材を用いた作品など17点を展示します。

図版上:マグダレーナ・アバカノヴィッチ「群衆IV」


戦後まもなく登場し、世界の美術界を席巻した『抽象表現主義』。その代表作家であるジャクソン・ポロックは床の上に拡げたキャンバスの上に絵具をはね散らかして描く「ドリッピング」の手法により、イメージではなく絵具の物質性を前面に押し出した独特の世界を構築し、人々を驚かせました。本展示ではポロックと並ぶドリッピング技法の第一人者、サム・フランシスの「サーキュラー・ブルー」によってその魅力をご紹介いたします。

また抽象表現主義と同時代の1950-60年代、ヨーロッパではアンフォルメル(非定型の意)運動が、日本では関西の具体美術協会の作家たちが、それぞれ別個に絵具の物質性を追求した作品を模索していました。本展示では絵具に石膏や砂を練り込んだスペインのアントニ・タピエスの「黒い空間」、ドロドロの絵具を上から下に流す元永定正(もとなが・さだまさ)の「作品」、足で絵具を踏み潰しながらダイナミックに描く白髪一雄(しらが・かずお)の「地猛星神火将」等を展示します。こうした「絵具の物質性の追求」の残滓は、1970年代以降においてもリチャード・セラ「バック・トゥー・ブラック」、李禹煥(リ・ウーファン)「線より」といった版画作品の中に見てとることができます。

一方、第一次世界大戦後にドイツのクルト・シュヴィタスが「gc」のようなゴミ(路上の紙くず)を用いた作品を制作して以来、廃物や、正規の画材ではない日常の持物をそのまま用いて作品を作り、その異様な物質感で見る人を驚かす作品が次々と生み出されました。段ボールと本物の扉を用いたロバート・ラウシェンバーグの「カードバード・ドア」や、ヴァイオリンを切断して箱に詰め込んだアルマンの「ビショップの悲劇」、海綿や小石を用いたイーヴ・クラインの「RE42」、そして産業用フェルトの質感を生かしたロバート・モリスの「無題」などがその好例です。またマグダレーナ・アバカノヴィッチの「群衆IV」は、ごわごわの麻布を樹脂で固めて首の無い群衆を作ることにより、考えることを封じられた現代人の姿を見事に造形化しています。

陶芸作家たちは昔から土という物質と格闘しながら作品を制作してきました。星野曉(ほしの・さとる)の「アーチ形の輪郭の中でIV」はこの「土と人間の格闘の過程」をそのまま作品化したものです。また同じく現代陶芸家である西村陽平(にしむら・ようへい)は、雑誌を焼いた灰を瓶詰めにして標本箱に並べた「時間と記憶」において、知識を伝達する書籍と言えどもただの物質に過ぎないのだと再確認させるという哲学的でコンセプチュアル・アート(概念芸術)的な造形を試みています。

図版上:星野曉「アーチ形の輪郭の中でIV」
なお出品作品リストはこちらをご覧下さい。


■常設展示日本美術院の作家たち」 9月4日(火)−10月28日(日)
■常設展示「物質(モノ)への挑戦」 9月4日(火)−12月16日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円)、高大生 250円(200円)、小中生 無料
( )内は20名以上の団体料金。
※企画展の観覧券で常設展もご覧いただけます。