2016年冬の常設展示、ご案内

冬期休館が明けた2月6日(土)から、美術館の常設展示室では新たにふたつの展示が始まります。常設展示室1(日本画・郷土美術部門)では『新収蔵品を中心に』と題し、平成26年度の新しい収蔵品を中心に展示いたします。滋賀県近江八幡市出身の紬織の人間国宝、志村ふくみの作品が多数展示されるのが見どころです。常設展示室2(現代美術部門)では『コラージュの世界』と題し、20世紀美術を代表する技法である「コラージュ(貼り絵)」を用いた作品を集めて展示いたします。

日本画・郷土美術『新収蔵品を中心に─志村ふくみ新収品ほか初公開!』
今回の展示作品の中心は、昨年平成27(2015)年に文化勲章を受章されたばかりの、近江八幡市出身の紬織の人間国宝作家・志村ふくみによる、草木染めによる初期の昭和39(1964)年から平成19(2007)年の近作に至る優美な紬織着物の数々および、小裂(こぎれ)などの関連資料の数々です。(会期中展示替えを行ないます)
志村ふくみの他にも、日本美術院の歴史画の大家で小倉遊亀の師でもあった日本画家・安田靫彦(やすだ・ゆきひこ)が渡来人の伝説の学者を描いた「王仁(わに)」、大津市出身の京都画壇の巨匠・山元春挙(やまもと・しゅんきょ)のスケール感あふれる風景画「主基地方図(4点組)」と「嵐峡之図」、近江八幡市出身のモダンで詩情あふれる水墨画家・茨木杉風(いばらき・さんぷう)の「湖畔」と「秋景大原女図」、大津市出身の関西洋画壇の重鎮・黒田重太郎(くろだ・じゅうたろう)の静物画「残菊」と「花」、滋賀県ともゆかりの深い京焼の大家・宮下善寿(みやした・ぜんじゅ)の陶器「彩泥花器 沈黙の風」などが展示されます。
なお併設の小倉遊亀コーナーも併せて展示替えとなります。展示作品は、新しく寄託された「花 其二」(京都大学人文科学研究所蔵)などです。

▲志村ふくみ「織部段(おりべだん)」(寄贈作品) 昭和62(1987)年 紬織着物

▲黒田重太郎「花」(寄託作品) 昭和2(1927)年 油彩・画布



■現代美術『コラージュの世界』
「コラージュ」は「糊付け」という意味の英語・フランス語で、20世紀美術を通して連綿と受け継がれてきた重要な制作技法のことです。
コラージュは1912年頃、パブロ・ピカソジョルジュ・ブラックによって発明された、パピエ・コレ(貼り紙)がその端緒だと言われています。当時、描く対象を幾何学的な要素に分解してゆくキュビスムの実験を行なっていたピカソたちは、それによって画面から失われてゆく対象の実在感を画面に取り戻そうとして、新聞紙や壁紙などを即物的に画面に貼り付け、そこに壁や新聞が存在することを暗示しようとしました。またダダイスムの作家クルト・シュヴィッタースは、路上で拾い集めた紙くずを画面に貼り付けて作品を作る「メルツ絵画」のシリーズを開始し、世間を驚かせました。シュールレアリスムの画家たちも意外なイメージの組み合せを生み出すことができるコラージュを活用しました。今回の展示ではアメリカのシュールレアリスム作家ジョゼフ・コーネルによる、箱状のコラージュ作品をご覧いただけます。
戦後の作家たちもコラージュを活用しており、今回はネオ・ダダの作家ロバート・ラウシェンバーグや、ポップ・アートの作家トム・ウェッセルマン、ジェームズ・ローゼンクイストの作品をご覧いただけます。

ジョゼフ・コーネル「シャボン玉セット(月の虹)宇宙の物体」 1950年代 箱状のミクストメディア

ロバート・ラウシェンバーグ「ミュール」 1974年 トランスファー・コラージュ


常設展示「新収蔵品を中心に─志村ふくみ新収品ほか初公開」 2月6日(土)─3月27日(日)
     「コラージュの世界」 2月6日(土)─3月27日(日)
休館日:毎週月曜日(月曜が祝日・振替休日の場合は開館し、翌日休館)
観覧料(共通):一般 500円(400円))、高大生 300円(240円)、小中生 無料 ( )内は20名以上の団体料金。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。
※毎日、午後2時から美術館サポーターによるギャラリートークを行います。