美術館の歩みを展覧会で振り返る(昭和61(1986)年)


少し間が空きましたが、『美術館の歩みを展覧会で振り返る』の第3回をお届けします。今回紹介するのは、開館3年目の昭和61(1986)年度です。



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特別展 茜さす蒲生野の詩情 野口謙蔵1986年04月12日─1986年05月18日  開催日数:32日  観覧者数:9,375人
この前の年度の「特別展 山元春挙」同様、湖国滋賀の郷土作家を紹介する春の特別展の第2回展です。今回は滋賀県蒲生町(現・東近江市)出身のわが県随一の洋画家・野口謙蔵(のぐち・けんぞう。1901-44)の回顧展で、洋画作品142点と日本画22点などを展示いたしました。野口謙蔵はその優れた個性により当館がイチ推ししている作家のひとりで、本展の後も平成13(2001)年度に回顧展を開いたほか、毎年常設展示室で特集展示の開催を続けています。野口謙蔵は近年、日本的洋画の開拓者のひとりとして再評価の機運が高まっている存在ですが、本展の開催がそのきっかけ作りとして役立ったのは事実だと思われます。
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大原美術館所蔵品展 近代日本洋画の名作1986年05月25日─1986年07月20日  開催日数:49日  観覧者数:13,321人
岡山県倉敷市にある、日本有数のコレクションを持つことで有名な大原美術館。その大原美術館の「近代日本洋画」と「現代美術」の両コレクションが2年連続で他館に貸し出されることになりました。第1弾となった本展では、藤島武二青木繁ら明治期の浪漫派の画家にはじまり、萬鉄五郎岸田劉生、中村彝ら大正期の個性派たち、梅原龍三郎安井曽太郎坂本繁二郎ら日本的洋画の大成者たち、そして坂田一男、古賀春江ら前衛洋画の巨匠にいたる、近代日本洋画の名品100点をご紹介いたしました。
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三橋節子回願展
1986年07月23日─1986年08月31日  開催日数:35日  観覧者数:15,456人
哲学者・梅原猛氏の著作「湖の伝説」で一躍有名になった日本画家・三橋節子(みつはし・せつこ)は、利き腕の右手をガンに侵されて切断、絵筆を左手に持ち替えて、琵琶湖に伝わる悲しい伝説にわが子への愛を託して制作を続けるも、惜しくも35歳の若さで夭折した悲劇の女流画家です。初期から絶筆に至る約100点の作品は、若い女性や主婦を中心とした観客に大きな感動の渦を巻き起こしました。展覧会のラストに展示されていた、夫の日本画家・鈴木靖正氏による臨終の節子を描いたスケッチ「おやすみ」を前に泣き崩れた方も多かったとか。
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モーリス・ルイス展
1986年09月13日─1986年10月19日  開催日数:32日  観覧者数:6,432人
開館してしばらくの間、当館は秋に現代美術の大型展示を開催するのが恒でしたが、そのほとんどは他館との共催により開催した、全国巡回を前提にしたものでした。ただしこの年の「モーリス・ルイス展」だけは、当館の単独開催で、アメリカから直接作品を取り寄せて開催した、画期的なものでした。ルイスは戦後アメリカの抽象表現主義のうち、第2期にあたるワシントン派を代表する巨匠ですが、彼の作品の3つの異なるタイプ(ベール絵画、拡がりの絵画、ストライプ絵画)がありますが、本展ではそれぞれのタイプから選ばれた色彩絵画16点と、1953年以前に描かれたドローイング30点を展示し、ルイス芸術の全貌を明らかにした意欲的なものでした。
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特別展 森口華弘 −人間国宝・友禅の技−
1986年10月26日─1986年12月07日  開催日数:37日  観覧者数:15,389人
湖国滋賀は日本画の他に、古都・京都に隣接していることもあってあまたの工芸作家を輩出している土地柄でもあります。その滋賀を代表する人間国宝(重要無形文化財保持者)のひとりが、守山市出身の友禅作家、森口華弘(もりぐち・かこう)です。本展は友禅着物85点と下絵、スケッチブック多数によって森口芸術の神髄を紹介しようとしたもので、華麗な着物の展覧会ということで女性客を中心に多くの来館者を集めました。なお当館はその後平成21(2009)年度に、華弘氏とその子息でやはり人間国宝作家となった森口邦彦氏の2人展を開催しています。
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シガ・アニュアル '87 主張する人体1987年01月06日─1987年02月15日  開催日数:36日  観覧者数:3,001人
滋賀を中心に現代の美術の様々な状況をアニュアル(年次展)形式で紹介する「シガ・アニュアル展」。その第2回展のテーマは「人体」。展示会場を6つのブースに分け、人体と深くかかわってきた6人の作家(都築房子・石原友明・舟越桂・中西學・池村玲子・服部冬樹)を、6つのミニ個展が連なっているような形式で紹介いたしました。後に人気作家となる、ドイツ在住の新表現主義の作家、池村玲子(現・レイコイケムラ)氏を取り上げていたのが新鮮でした。
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フランス近代巨匠の版画展
1987年02月28日─1987年04月05日  開催日数:32日  観覧者数:7,925人
実を言うと当館はこの時期、アンリ・マチスの大規模な版画展を計画していたのですが、諸事情により開催が困難になり、急遽近隣の県立美術館からフランスの近代巨匠たちの版画223点を借り受け、企画した展覧会が本展です。蓋を開けると、マチスピカソ、ルオー、ルドン、ミロ、シャガールの6作家の、連作版画を中心にした展示はかなり見応えがあり、突貫工事の展覧会とは思えない充実した内容となりました。ご無理を厭わず作品を快くお貸し下さいました美術館ならびに関係者の皆さまに、深くお礼を申し上げます。
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