美術館の歩みを展覧会で振り返る(昭和62(1987)年)


『美術館の歩みを展覧会で振り返る』の第4回です。今回紹介するのは、年間来館者数の最高記録を持つ、開館4年目(まる3周年目)の昭和62(1987)年度です。



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特別展 岸 竹堂 −近代京都画壇の夜明け−
1987年04月18日─1987年05月17日  開催日数:26日  観覧者数:10,008人
山元春挙展」「野口謙蔵展」に続く、滋賀県ゆかりの巨匠を紹介する春の特別展の第3弾です。今回は幕末の彦根に生まれた近代京都画壇の先駆者のひとり、岸竹堂(きし・ちくどう)の回顧展で、屏風絵・襖絵の大作を含む代表作49点と、染織品や下絵写生などの諸資料を多数展示いたしました。虎をはじめとする力強い動物画や、雄大な風景画を得意とした画家で、その迫力は現代の来館者をも圧倒するに充分でした。
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大原美術館所蔵品展 20世紀・世界の美術
昨年度の「近代日本洋画」に引き続いて開催された、岡山県倉敷市大原美術館のコレクションを紹介する展覧会の第2弾です。今回は抽象絵画の父と呼ばれるカンディンスキーにはじまり、キリコ、クレー、ミロら戦前の巨匠たち、戦後ヨーロッパのアンフォルメル絵画、アメリカ抽象表現主義、その他ポップ・アート、オプ・アー ト、ミニマル・アートなど、20世紀に起こった主たる美術潮流を、作品115点によって概観できるという、現代美術への入門編としても格好の展覧会でした。来館者数は昨年度の日本洋画の約半分でしたが、ご覧になられた方の満足度は変わらなかっただろうと思います。
1987年05月23日─1987年06月28日  開催日数:32日  観覧者数:7,552人
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ボロフスキー展
1987年07月14日─1987年08月30日  開催日数:42日  観覧者数:26,454人
当時は西武百貨店の広告にも起用されて注目を集めていた、現代アメリカ作家ジョナサン・ボロフスキーの大規模な個展で、来館者総数26,454人は、当館の企画展入場者数堂々第1位です(2位は「ロバート・メイプルソープ展(平成5年度)」の25.089人、3位は「イサム・ノグチ展(平成18年度)」の23,619人です)。絵画、彫刻、素描、オブジェ、ビデオなど70余点をの作品を縦横無尽に駆使した展示は、まるで美術館全体がテーマパークになったようで、大人から子どもまで多くの来館者の度肝を抜きました。先立って実施された東京会場では天井をぶち抜いた展示が話第となりましたが、当会場でも滋賀県の竹を使った巨大なインスタレーションや、ガラス壁に石がぶつかって偶然開いた穴をそのまま利用した作品など、滋賀ならではの展示物が来館者を楽しませました。
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ラファエル前派とオックスフォード
1987年09月08日─1987年10月04日  開催日数:24日  観覧者数:13,256人
19世紀半ばのイギリスに興ったラファエル前派は、世紀末芸術のブームに伴い日本でもファンが増えつつありました。本展はオックスフォードで多面的に展開したラファエル前派の活動に焦点をあてた、数あるラファエル前派の展覧会の中でもユニークな企画で、ロセッティ、ホルマン・ハント、ミレー、バーン・ジョーンズ、モリスらをはじめとする35人の代表作家による、油彩・水彩・素描・タピストリーなど104点の作品を紹介いたしました。とりわけハント、ミレーら草創期の作家たちの作品が充実しており、本展をきっかけにラファエル前派の魅力に開眼したという方も多かったもようです。
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モンドリアン
1987年10月10日─1987年11月08日  開催日数:26日  観覧者数:12,013人
この年、お隣の京都では抽象絵画の父カンディンスキーの展覧会が開かれ、話題を集めていました。同展に少し遅れて開催された本展は、赤青黄の三原色と縦横の線だけで構成された作品で有名な、もうひとりの抽象絵画の父と呼べるオランダのピエト・モンドリアンの回顧展で、ハーグ市立美術館の所蔵品の中から厳選した油彩・水彩・素描115点に最晩年のニューヨーク時代の作品1点を付け加えて展示したものです。初期の自然主義的な風景画から徐々に純粋抽象へと変わってゆくモンドリアン芸術の軌跡を追うことができる、見応えのある展示でした。
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近代日本画の秀作と小倉遊亀作品展
1988年01月05日─1988年02月21日  開催日数:42日  観覧者数:7,078人
開館3周年展として企画された本展は、当館の収蔵品のなかから近代日本画の優作52点を厳選して展示した拡大常設展示です。この年度は西洋美術の展覧会が相次ぐことになってしまったため、日本画ファンのためにはちょっとした息抜きとなりました。けれども展示作品は、小倉遊亀を中心に横山大観菱田春草速水御舟安田靫彦日本美術院の巨匠たち、岸竹堂、山元春挙三橋節子ら郷土滋賀県ゆかりの画家たちなど、当館が所蔵する一級品ばかりを集めており、開館以来初めて開催する日本画部門の名品展として見応えのある内容でした。
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西独フォン・デア・ハイト美術館所蔵 魅惑の西洋絵画展
1988年02月27日─1988年03月27日  開催日数:26日  観覧者数:18,465人
この年度最後の企画展は、昭和60年度の「親と子で見るフランス名画展」以来待望されていた泰西名画展でした。ドイツ中部のブッパータール市にあるフォン・デア・ハイト美術館が所蔵する、19・20世紀のヨーロッパ絵画の名品104点を時代順に展示したもので、ドラクロワ、コロー、モネ、ルノワールゴッホシャガールピカソなどよく知られたフランスの巨匠たちだけでなく、ムンク、クレーをはじめとするドイツ語圏の画家たちや、日本ではあまり目にする機会のないドイツ近代美術の作品を多数含んでいるのが特徴でした。フランスとドイツを対比しながら、西洋近代絵画150年の旅ができるという楽しい展覧会でした。
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