彫刻の道を歩いてみよう その2

美術館の右(西側)をバス停に向かってのびる石畳の遊歩道「彫刻の道」。そこに立ち並ぶ野外彫刻を紹介するシリーズの第2回です。

前回紹介した「夏至の日に影が消える作品」からさらに進むと、上の写真のような作品が見えてきます。平らな鉄の板を重ねたような作品ですが、よく見ると表面にはなにやら英語の文章が。作品全体の雰囲気も、なんだか記念碑か、お墓(墓碑)のようなムードです。

英語で書かれている文章は、日本語にすると「焼かれた声帯、もしくは自分の故郷が違うものに感じられる者のために」といった意味になります。

「焼かれた声帯」という言葉がなんとも不可解ですが、作品のかたわらに置かれた酸素ボンベの存在が、それを読み解くヒントになります。
酸素は人が生きるために必要なものですが、同時にあらゆるものを燃やし尽す力も持っています。実はこの作品の作者、第二次世界大戦時に原爆の炎で焼かれたヒロシマのことを念頭に置いて、この作品を制作したのだそうです。「焼かれた声帯」は戦争時のコミュニケーションの不在を意味しているのでしょうか。そう思うと、この作品が墓碑に似ている理由がなんだかわかるような気もしますね。

(写真:村岡三郎「酸素/滋賀」 1993年 コーテン鋼、酸素ボンベ)