「ロトチェンコ+ステパーノワ」展の会場から その1

7月3日(土)から始まった「ロトチェンコ+ステパーノワ−ロシア構成主義のまなざし−」展。その会場の様子をシリーズでレポートいたします。

本展は「絵画」「グラフィック(ドローイング・版画)」「空間構成」「建築」「デザイン」「演劇」「印刷物(本・ポスター)」そして「写真」の8の分野に分けて、構成主義の中心的存在であったアレクサンドル・ロトチェンコ(1891-1956)とその妻ワルワーラ・ステパーノワ(1894-1958)の作品を展示しています。最初のコーナーは「絵画」。当時のモダンアートの趨勢に従って具象絵画からスタートし、立体派や未来派の影響を受けながら次第に非具象、抽象へと歩んでゆく2人の作品の変容過程がよくわかります。彼らの絵画における前衛的な実験は次第に先鋭度を増し、線だけを用いた構成や、極端に単純で禁欲的な構成へと移ってゆきます。そしてその頂点に位置する作品が下の写真。「なめらかな色」(1921年)と題するロトチェンコの三部作です。赤、青、黄色という色彩の三原色で塗りつぶされただけのキャンバスは、これ以上の単純化を許さない極北の絵画であり、評論家はこれを「最後の絵画が描かれた」と評しました。

ロトチェンコ夫妻はこの作品以降、もうこれ以上絵画の分野で実験できることはないとばかり、絵画を離れてデザインの分野に進みます。2つ目の展示室で特に目を引くのが、木や合板を組み合わせて作られた空間構成の作品群です。伝統的な西洋彫刻が量塊(マッス)を基本としていたのに対し、これら作品群は平面や線を基本パーツとして構成された、骨組みもあらわな、まったく新しい立体造形でした。分子模型を思わせる洗練された美しさを持ったこれら作品群は、後世のデザイナーや建築家たちに大きな影響を与えています。
下の写真の中央上に写っている、天井からつり下げられたロトチェンコの「空間構成10番」が、壁に映った影の状態でもはっきりと構造がわかる《骨組みの構成》であることにご注目下さい。

「ロトチェンコ+ステパーノワ−ロシア構成主義のまなざし」
会期:7月3日(土)−8月27日(日)
観覧料:一般 950円(750円))、高大生 650円(500円)、小中生 450円(350円)
    ( )内は前売および20名以上の団体料金。
企画展の観覧券で常設展「夏休み子ども美術館」も観覧できます。