「ロトチェンコ+ステパーノワ」展の会場から その2

7月3日(土)から始まった「ロトチェンコ+ステパーノワ−ロシア構成主義のまなざし−」展。その会場のようすをお伝えするレポートの、第2回です。

1921年以降絵画を捨ててデザインの領域に足を踏み入れたロトチェンコとステパーノワ。「建築」や「演劇」の分野にも興味深い作品は多数ありますが、会場でひときわ目を引くのは2人がデザインした広告ポスターの数々です。通行人の目を引くよう巧みに単純化され時にユーモアも交えて構成されたそれら図柄は、力強さと都会的な洗練されたセンスを併せ持ち、80年以上経った今でもいっこうに古びていません。むしろ現在においても、デザイナーや多くのクリエイターに霊感を与え続ける、永遠に新しい古典になっていると言えましょう。

上の写真はポスターの展示風景ですが、手前のアクリルケースの中には興味深いものが展示されています。これはロトチェンコ夫妻がデザインした「麻雀牌」で、ご遺族から特別に借用してきたものです。今世紀の初頭に西洋諸国で麻雀が流行していたことは知る人ぞ知る事実。ロトチェンコ夫妻も例外ではなく、牌を自分たちでデザインするほどに入れ込んでいたとか。彼らの人間的な側面を窺うことができる面白い作品ですね。

今回の展示でご注目いただきたいもののひとつが、ロトチェンコが1920年代から30年間撮り続けた、写真の数々です。彼の交友関係を示す知人たちのポートレートには、ポスター等の共同製作者として親交を深めていた詩人マヤコフスキーや、高名な作家トレチャコフらの姿もあります。しかしさらに興味深いのが、遠近法を強調した実験的映像の数々。上の作品「避難梯子」(連作「ミャスニツカヤ街の家」より)にも表れているように、ロトチェンコは思いがけないアングルから斬新な映像を見つけ出す才能に溢れていました。都市の生活、人々の風俗などありふれたものを題材としながら、彼は通常のカメラマンのように目の高さやへその高さにカメラを構えることはせず、予想もつかない角度から被写体を捉え、その魅力を最大限に引き出しています。奇抜な映像に慣れた現代の我々の目から見ても新鮮な驚きに満ちたロトチェンコの写真作品、この機会にぜひご覧下さい。

「ロトチェンコ+ステパーノワ−ロシア構成主義のまなざし」
会期:7月3日(土)−8月27日(日)
観覧料:一般 950円(750円))、高大生 650円(500円)、小中生 450円(350円)
    ( )内は前売および20名以上の団体料金。
企画展の観覧券で常設展「夏休み子ども美術館」も観覧できます。