「白洲正子 神と仏、自然への祈り」展の見どころ紹介 その1


「生誕100年特別展 白洲正子 神と仏、自然への祈り」展の見どころを、順に紹介してゆくシリーズの第1弾です。これから4回に分けて、同展の主な展示作品をコーナー毎にご紹介いたします。
本展の会場は「西国巡礼」「近江山河抄」「かくれ里」「十一面観音」など、彼女の著作のタイトルなどにちなんだ10のコーナーに分けて、彼女の著作に基づきつつ、宗教芸術を中心にした日本の古い美術作品を紹介しています。

展覧会場最初のコーナーは「自然信仰」です。白洲正子は、日本人の信仰の原点は自然崇拝であり、美の源泉は自然の中にあると考えていました。このコーナーでは「富士曼荼羅図(ふじまんだらず)」(静岡県立美術館蔵)、「那智参詣荼羅図(なちさんけいまんだらず)」(和歌山・熊野那智大社蔵)、「武蔵野図屏風」(石川県立美術館蔵)など、勇壮で広大な大自然を前にした、日本人の畏敬の念をあらわした作品が展示されています。


そしてそれら自然は、擬人化されて様々な神像の形を取ることになります。続く「かみさま」のコーナーでは、自然を擬人化した素朴な神像などを展示しています。

上の写真左側は、「重文 木造 女神坐像」(建部大社蔵)。12世紀の神像で、素朴な味わいが魅力的です。なお左右の2神は、少し後の時代の作です。
右は「延命冠者(えんめいかじゃ)」(滋賀・大皇木地祖(おおきみきじそ)神社蔵)。長寿・繁栄の徳相を備えた面とされ、宗教芸能延年に用いる仮面です。


3つ目のコーナーは「西国巡礼」。このコーナーの元になった白洲正子の著書『巡礼の旅ー西国三十三カ所』は、昭和40年に出版された正子にとって最初の紀行文学です。西国三十三ヶ所巡りの第1番札所(ふだしょ)“那智山青岸渡寺(なちさん・せいがんとじ)(和歌山県)”に始まり、最後の“谷汲山華厳寺(たにぐみさん・けごんじ)(岐阜県)”に至るまでを旅して、その印象を記したものです。展示室ではこれら三十三の礼所にまつわる美術作品の数々を展示しています。

左の写真は「長命寺参詣曼荼羅(ちょうめいじ・さんけい・まんだら)」(長命寺蔵)。滋賀県近江八幡市にある西国観音巡礼第31番札所・長命寺の一山の様子と、寺伝や歴史をひとつの画面に描き込んで、布教のための絵解きに使用したものです。なおこの作品は11月9日からの展示となります。


「生誕100年特別展 白洲正子 神と仏、自然への祈り」
会期:10月19日(火)−11月21日(日) 月曜日休館
観覧料:一般 950円(750円))、高大生 650円(500円)、小中生 450円(350円)
    ( )内は前売および20名以上の団体料金。
企画展の観覧券で常設展「横山大観と仲間たち」(11月2日からは「琵琶湖逍遥」に展示替え)および「赤と黒」も観覧できます。