美術館の裏方をのぞく:設備編(2)撮影スタジオ

来館者がふだん見る機会のない美術館の裏方の設備。美術館に勤めたばかりの若手スタッフたちが、それをチラリと覗いてみる企画の第2回は、「撮影スタジオ」です。


美術館の地下にある広さ50畳あまりのスタジオでは、研究、展覧会資料となる画像を撮影するため、収蔵作品などの撮影が随時行われています。(スタジオの隣には現像を行うための暗室も備え付けされています。)

スタジオ内には、作品の背景に使用する大きな背景(バック)紙や、小さな作品を上に乗せて撮影するための脚付きの撮影台(作品の背後に床と背景の境界線ができないように、曲面でできています。)、スタンドライトなど、一般の撮影スタジオにあるような機材の他に、絵画等を立て掛けるイーゼルなど、美術品を撮影するための特別な備品もたくさん用意されています。



そんな機材、備品の中から、私の目から見てひときわ強い存在感を放っていた「カメラ」を取り上げて紹介しましょう。

開館当時に購入されたこのカメラ、形式としては昭和初期によくあった蛇腹式カメラと、現在のデジタルカメラ以前に普及していたフィルム形式の一眼レフカメラとの、ちょうど中間に位置するような形式の構造になっています。フィルムの大きさもブロニー版と言って、一般的な35ミリフィルムより二回りほど大きいのだそうです。ファインダーは上部に付いており、上からのぞき込んで撮影します。
(最近はデジタルカメラが主流で、すっかりフィルムカメラの存在自体が薄くなり、フィルムを現像できる場所も少なくなってしまいましたね…)

開館当時から学芸員が手にして大活躍していたという、年期の入ったこのカメラ…。
フィルム式であることや、プロのカメラマンさんに撮影依頼する機会も増えたことから、実は現在はほとんど使用されていません。ですが、たくさんの美術品を写してきたこのカメラには、当館の学芸員の思いでもたくさん詰まっており、出番がめっきりなくなった今でも大切に扱われています。

美術館にはまだまだ他にも、一般の来館者が見ることのできない場所や、工夫された設備などがたくさんあります! 次回もお楽しみに!