開催中の常設展示のご案内

次回企画展がはじまるまでの間、当館は常設展示のみの期間が続きます。けれども現在開催中の常設展示は、ふだんの展示とは毛色の異なる作品に焦点を当てた興味深いものばかり。きっと満足いただける内容です。うららかな春の陽気に誘われたのどかな日は、ぜひとも当館にお立ち寄りください。(会期は2012年4月1日(日)まで)


《展示室1:日本画・郷土美術部門》『滋賀の洋画』
日本画・郷土美術部門の展示室では、ふだんは日本画作品を中心に展示していますが、現在は洋画の展示です。滋賀県出身で関西洋画壇の重鎮であった黒田重太郎(くろだ・じゅうたろう)と、日本的洋画の開拓者のひとり野口謙蔵(のぐち・けんぞう)を中心に、滋賀県ゆかりの洋画家たちを多数紹介しています。

黒田重太郎は滋賀県大津市で大阪の豪商の家系に生まれ、鹿子木孟郎(かのこぎ・たけしろう)や浅井忠(あさい・ちゅう)に師事して洋画を学び、渡欧後は小出楢重(こいで・ならしげ)や鍋井克之(なべい・かつゆき)らと信濃橋洋画研究所を設立したり、戦後の二紀会の結成に加わるなど、昭和の関西洋画壇を支えた重鎮画家のひとりです。今回の展示では初期から晩年に至る代表作8点を一堂に展示し、その画業を偲びます。また師・鹿子木孟郎の作品も常設展示室でご覧いただけます。(写真:黒田重太郎「白衣大師」)

滋賀を代表するもうひとりの巨匠・野口謙蔵は、東京美術学校和田英作(わだ・えいさく)に師事し、卒業後は郷里の蒲生町(現・東近江市)にこもってひたすら郷土の自然と人々の暮らしを、愛情込めて描き続けた画家です。その作風は油絵でありながら、日本画、特に南画(文人画)を思わせる自由奔放で軽妙な味わいがあり、また日本絵画特有の構図法なども巧みに用いることによって、「油絵で描いた日本画」と評される独特の世界を完成させました。生涯滋賀から離れることなく夭折したため、長い間知る人ぞ知る存在でしたが、近年になって梅原龍三郎(うめはら・りゅうざぶろう)や坂本繁二郎(さかもと・はんじろう)らと並ぶ「日本的洋画の開拓者」のひとりとして再評価が進んでいる画家でもあります。(写真:野口謙蔵「冬日」)

本展示ではこの二人を中心に、彦根漁港の風景を描き続けた島戸繁(しまど・しげる)、近江八幡出身の伊庭伝治郎(いば・でんじろう)、野洲出身の鷲田新(わしだ・あらた)など、滋賀県ゆかりの画家たちの作品を多数展示し、湖国洋画壇の全貌を概観いたします。
なお本展示の見どころは、このブログでもご紹介しています。下記のリンクからご覧ください。
【第1回】 【第2回】 【第3回】


一方《展示室2:現代美術部門》では、ふだんはアメリカを中心とした世界の現代美術作品をご紹介していますが、今回はあえて日本国内に目を向け、前衛洋画の先駆者たちの作品から現在活躍中の作家たちまで連綿と受け継がれている、日本の現代前衛絵画の流れを概観する展示『日本の前衛』を開催中です。

展示は昭和戦前期の二科会において前衛的な表現を追求した「九室会」のメンバーであった、吉原治良(よしはら・じろう)、斎藤義重(さいとう・よししげ)、菅井汲(すがい・くみ)らの作品にはじまり、1960年代に海外で活躍した草間彌生(くさま・やよい)や篠原有司男(しのはら・うしお)、70年代初頭のコンセプチュアル・アート(概念芸術)を代表する世界的作家である河原温(かわら・おん)や荒川修作(あらかわ・しゅうさく)、日本のミニマル・アート(最小限芸術)を代表する桑山忠明(くわやま・ただあき)とや山田正亮(やまだ・まさあき)、ハイ・レッド・センターというグループで実験的な活動を繰り広げた高松次郎(たかまつ・じろう)や中西夏之(なかにし・なつゆき)など。日本の現代美術史を彩った錚々たる顔ぶれの作品群を展示し、戦後日本現代美術の流れを概観していただきます。(写真:斎藤義重「作品12」)
なお本展示の見どころは、このブログでもご紹介しています。下記のリンクからご覧ください。
【第1回】 【第2回】 【第3回】


常設展示「滋賀の洋画」「日本の前衛」 1月21日(土)−4月1日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円)、高大生 250円(200円)、小中生 無料
( )内は20名以上の団体料金。