たいけんびじゅつかん「絵巻×マンガ 意外なカンケイ〜マンガを描いてみよう〜」が開催されました。

たいけんびじゅつかん「絵巻×マンガ 意外なカンケイ〜マンガを描いてみよう〜」が11月23日(金/祝)に開催され、大人と子ども合わせて21人の方が参加されました。


今回のたいけんびじゅつかんは、企画展「石山寺縁起絵巻の全貌」と関連したワークショップで、石山寺縁起絵巻に登場する話を題材に、マンガを描いてみようという企画です。
全く関係のないように見える「絵巻」と「マンガ」ですが、実は人の表情や、物の動きなど、似ている点がいくつかあります。そんな「絵巻」と「マンガ」の共通点を子どもたちと一緒に探りました。

まずは現代の私たちには馴染みのない絵巻とはどんなものか知ってもらうため、学芸員による絵巻の見方のレクチャーから始まりました。


絵巻は肩幅の長さにだけ開けます。絵巻はお話が右から左へ流れていきます。右手で過去を巻き取り、左手で未来を広げ、読み進めていきます。速く巻き進めると、アニメーションのようにも見えるそう。

また、「絵巻とマンガの似ているところを探してみよう!」のコーナーでは、『石山寺縁起絵巻』の中に登場する人物など、現代のマンガでも使われている表現や似ている表現をみんなで探しました。

例えば、『石山寺縁起絵巻』【第二巻 第七段】では、男の人がなぎなたを振り回している様子を描かれています。なんと、回っている動きを表すために円やなぎなたの残像まで描いていて現代のマンガでも見かける表現です。
他にも似ているところはまだまだあります。

石山寺縁起絵巻』【第四巻 第十九段】では、同じ一つの画面に、黄色の着物を着た同一人物がいくつも描かれているシーンがあります。これは絵巻特有の表現方法で、「異時同図法」と呼ばれています。字の通り、異なる時間を同じ画面に描き、その人物の動きと時間の経過を表しています。

他にもマンガに似た表現がいくつもあり、絵巻はマンガの原点と言われるのも頷けます。



展覧会を鑑賞した後は、いよいよ「マンガを描いてみよう」のコーナーです。
今回は特別講師として、プロの新人漫画家をお呼びしました

漫画家の先生が、プロのマンガの描き方を子どもたちに伝授してくれました。


↑マンガができるまでの全ての行程です。
今回は石山寺縁起絵巻の話を題材にマンガを描くので、プロットと呼ばれる台本のようなものはすでにこちらで用意しました。子どもたちには下絵から完成までを目指してもらいます。


<下絵>

↑先生が用意してくれたネーム(下絵の前に描く簡単なスケッチのようなもの)を見ながらも、自分なりに工夫して鉛筆で描いていきます。
<ペン入れ>

↑プロの漫画家も使う「つけペン」にインクをつけて描きます。扱いが難しく、みんな苦戦していました。


↑漫画家の先生がマンガで使う様々な効果をみんなに実演してくれました。

<ベタ>

↑「ベタ」と呼ばれる作業で、人物の髪など黒く塗ります。細かいところまで丁寧に塗っています。

スクリーントーン


スクリーントーンと呼ばれる様々な柄を印刷したシールの様な物を貼っていきます。


↑はじめての作業の連続でしたが、みんな描いているうちに上達していました。


↑先生がみんなに直接教えてくれていました。プロの技に子どもも大人も感激!

今回のたいけんびじゅつかんでは、通常よりも長い時間開催し、対象年齢も小学四年生から中学生までに絞りました。マンガを本格的に描くと時間がどうしてもかかってしまいます。プロでも原稿一枚仕上げるのに半日程かかるそう。
そんなマンガに、子どもたちみんなは休まず集中し、三時間程で描き上げました。慣れない道具で最後までがんばった魂の籠った作品、一部ですがご覧ください。

【第二巻 第六段】普賢院の淳祐(しゅんにゅう)、夢により美男子に再生する。

【第二巻 第十一段】石山寺僧 歴海和尚の孔雀経に、龍王たちが恐れ敬う。


【第四巻 第十六段】紫式部石山寺で『源氏物語』を書く。

【第七巻 第三十一段】身売りした少女、嵐の湖水により白馬に救われる。



どれも、『石山寺縁起絵巻』ってマンガにするとこんなに面白いの?それとも、参加者の自由な発想で描かれたマンガだから面白いの?と、思わせる作品に仕上がっています。同じ話を題材に描いているのに、それぞれ表現が違っているのも面白いです。
絵巻にもマンガにも、見る人をどうやって楽しませるか、その中でどう工夫して自分なりの画面を見せるかが意識されています。描き手の伝えたい思いが込められているのは絵巻もマンガも同じです。

今回のたいけんびじゅつかんは、終了後に参加者の方が描いたマンガを冊子にまとめました。来館者の方にも見ていただけるようにその冊子を会期中に展示しました。力作揃いの冊子に、読まれた方々は楽しまれている様子でした。


今年のたいけんびじゅつかんは今回のイベントで終わりになります。また、来年も楽しい企画を開催していきますのでお楽しみに!