春から初夏の常設展示 予告

現在好評開催中の常設展示「新収蔵品を中心に」「写真×現代美術」は3月31日(日)で終了し、年度が変わった4月2日(火)からは新しい内容の模様替えいたします。展示室1では滋賀県ゆかりの洋画家たちを集めた展示を行い、展示室2では伝統的な工芸技法を用いた現代のユニークな作品群を紹介いたします。どちらもお楽しみに。(会期は6月23日(日)まで)


『滋賀の洋画』 4月2日(火)─6月23日(日)
《展示室1:日本画・郷土美術部門》では、日本的洋画の開拓者のひとり野口謙蔵(のぐち・けんぞう)と、大津市出身で関西洋画壇の重鎮であった黒田重太郎(くろだ・じゅうたろう)を中心に、滋賀県ゆかりの洋画家たちの作品を集めた展示を行います。

▲野口謙蔵「梅干」
野口謙蔵は、東京美術学校卒業後、郷里の蒲生町(現・東近江市)にこもってひたすら郷土の自然と人々の暮らしを、愛情込めて描き続けた画家です。その作風は油絵でありながら、日本画、特に南画(文人画)を思わせる自由奔放で軽妙な味わいがあり、「油絵で描いた日本画」と評される独特の世界となっています。

▲黒田重太郎「渓間に残る雪」
滋賀を代表するもうひとりの巨匠・黒田重太郎は滋賀県大津市で大阪の豪商の家系に生まれ、小出楢重(こいで・ならしげ)や鍋井克之(なべい・かつゆき)らと信濃橋洋画研究所を設立したり、戦後の二紀会の結成に加わるなど、昭和の関西洋画壇を支えた重鎮画家のひとりです。

▲伊庭伝治郎「渓谷」
本展示ではこの二人を中心に、彦根漁港の風景を描き続けた島戸繁(しまと・しげる)、近江八幡出身の伊庭伝治郎(いば・でんじろう)、野洲出身の鷲田新(わしだ・あらた)など、滋賀県ゆかりの画家たち、計9名、22点の作品を展示し、湖国洋画壇の全貌を概観いたします。


『工芸×現代美術』 4月2日(火)─6月23日(日)
《展示室2:現代美術部門》では、陶、染織、紙工芸など伝統的な工芸技法を用いて斬新な造形を制作している、現代日本の作家たちの精華を紹介する展示を開催いたします。出品作品数は10名による計16点です。

▲秋山陽「Semiplan Series 881」
《陶》:甲賀市信楽町在住の奥田博土(おくだ・ひろむ)は、伝統的なロクロによる造形に枯れ木などの付属物を組み合わせ、手わざの美とプリミティヴで野性的な造形感覚が融合した巨大なオブジェを作ります。秋山陽(あきやま・よう)は粘土が固まる前にガスバーナーで土の表面をあぶってウロコのような亀裂を生じさせ、大地の感触や生命感を喚起させる力強い造形を生み出しています。星野曉(ほしの・さとる)は柔らかい粘土の塊まりに手を当て、指で粘土を掴み出し盛り上げることで、作者の身体と土との格闘の痕跡を生々しく強烈に造形化しました。中村康平(なかむら・こうへい)は釉薬を巧みに用いて、生物の化石か人体標本の一部、あるいは錆びて廃棄された機械を連想させる小型のオブジェを制作しています。

▲大手裕子「Close to Cloth '92」
《染織》:タペストリー(室内装飾用の壁掛け織物)作家の朝倉美津子(あさくら・みつこ)は手染めと手織りにこだわり、日本の伝統的な帯や折り紙などの要素も取り入れて、伝統の暖かみを感じさせるシンプルで現代的なデザインの作品を作り続けています。大手裕子(おおて・ゆうこ)は絣(かすり)文様を利用した二重(ふたえ)織りの技法を用いて帯状の布を織り上げ、それらを天井から浮遊するように吊るして作品を作ります。本田昌史(ほんだ・まさし)はコンピュータグラフィックを駆使して幾何学的で奇妙なパターンを作り上げ、それを写真やイラストと組み合わせて巨大な布に染め抜いて作品化しています。

▲角喜代則「森の妖精」
《紙》:朝倉俊介(あさくら・しゅんすけ)は和紙の張り子の要領でタケノコのような物体を作り、表面を漆や柿渋で塗装して自然の温もりを感じさせる作品に仕上げています。角喜代則(かど・きよのり)は和紙や新聞紙を幾重にも貼り重ねて大胆なフォルムを作り、作品の表面をグラインダーで削りバーナーであぶって、貼り重ねた紙をまるで木目のような模様に変えています。陶芸作家の西村陽平(にしむら・ようへい)は、陶器を焼く窯で本や雑誌を焼成してその灰を瓶詰めの標本にし、見る者に遥か悠久の時間の果て、人類の文化の行く末に思いを馳せさせるような作品を作りました。
現代の作家たちが伝統の技を用いて作ったユニークな作品群、この機会にぜひお楽しみください。


常設展示「滋賀の洋画」「工芸×現代美術」 4月2日(火)−6月23日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円)、高大生 250円(200円)、小中生 無料
( )内は20名以上の団体料金。

※企画展「装いとしつらえの四季」(4月6日(土)−6月30日(日))の観覧券で、常設展もご覧いただけます。