秋の常設展示は「人物の表現」と「カオスとコスモス」の2本立て

9月3日(火)から、常設展示が展示替えいたします。展示室1(日本画・郷土美術部門)は「人物の表現」、展示室2(現代美術部門)は「カオス(渾沌)とコスモス(調和)」と題し、芸術の秋にふさわしい名作・秀作を展示いたします。


「人物の表現」では、歴史画、風俗画など多彩なジャンルの日本画作品における、さまざまな人物表現を紹介いたします。
時代や地域を問わず、絵画の主要テーマのひとつである「人物」。日本絵画においても、「ひとのかたち」は様式や技法を変えながら多くの画家が取り組み続けて来た主題です。本展示では、江戸時代から近代にかけて描かれた人物主体の日本絵画作品22件をご紹介します。
主な展示作品は、彦根出身の岸竹堂(きし・ちくどう)が京都の知恩寺に伝わる中国の画家・顔輝(がんき)の作品を模写した「鉄拐蝦蟇仙人図(てっかいがませんにんず)」や、京都の文人画家・冨田溪仙(とみた・けいせん)が中国の仙人たちを連作で描いた「列仙」のような、空想に基づくユニークな作品にはじまり、歴史画の大家・安田靫彦(やすだ・ゆきひこ)が源義経静御前の別れを描いた「静訣別之図(しずかけつべつのず)」、同じく安田靫彦が飛鳥大仏建立の際のエピソードを描いた「飛鳥大仏と止利仏師」、今村紫紅(いまむら・しこう)が中国の三国志の中の“三顧の礼”のシーンを描いた「草廬三顧(そうろさんこ)」、中村岳陵(なかむら・がくりょう)が水戸黄門として知られる徳川光圀の学者としての側面を描いた「徳川光圀」のような歴史画の名作秀作が続き、さらに上村松園(うえむら・しょうえん)の「ふり袖」、伊東深水(いとう・しんすい)の「朝顔と少女」、北野恒富(きたの・つねとみ)の「暖か」といった美人画の名品が続きます。
上記の他にも興味深い作品がいっぱい。芸術の秋に合わせてぜひご観覧ください。
なお併設の小倉遊亀コーナーも、本展示に合わせて展示替えが行われます。新しい展示作品は「首夏」「少将滋幹の母 挿絵」「花屑」「半夏生」「白桃」「盛花」「少女」「家族達(昭和34年)」「観自在」「菩薩」「花と果物」「古陶磁と青柿・白桃・マンゴーなど」「うす霜」 の13点です。

▲冨田溪仙「列仙」(12面のうち8面)

▲中村岳陵「徳川光圀

上村松園「ふり袖」


現代美術部門の展示「カオス(渾沌)とコスモス(秩序)」では、当館の収蔵方針である「アメリカと日本を中心とした現代美術」の中から、「渾沌≒暴力性≒偶然と無意識の発露」と「秩序≒純粋性≒人間性の否定」という、美術が内在する「相反する二つの方向性」を検証する展示を行ないます。
【1. ミクロコスモス(小宇宙)とマクロコスモス(大宇宙)】
人間の深遠な内面世界とその表現をもって「内なる小宇宙(ミクロコスモス)」と呼ぶことがあります。
本展示ではまず、心の中の小宇宙を表現しようとした抽象絵画の父カンディンスキー、路上で拾い集めた紙くずを無造作に貼り合わせて偶然による意外な世界を生み出したシュヴィタス、古い木箱の中にオブジェを詰め込んでおもちゃ箱のような小宇宙を作り挙げたコーネルらの作品、して大宇宙(マクロコスモス)の秩序と小宇宙(ミクロコスモス=人間存在)の関係についての哲学的な問い掛けを、太陽の通り道を一年間通して一枚の写真に記録することで表現した野村仁(のむら・ひとし)の作品を紹介します。
【2. 20世紀・先鋭化するカオス(渾沌)とコスモス(秩序)】
次いで、理性に抑圧された近代的束縛からの解放を目指す動き(=カオス(渾沌)への指向)と、理性と科学を崇拝し純粋さに価値を置く動き(=コスモス(調和)への指向)という、20世紀の文化が抱えた二種類の動向を、1950年代抽象表現主義を代表するマーク・トビー、サム・フランシス、マーク・ロスコらの作品と、作品の中から内面表現や手わざを徹底的に排除し、極度に秩序立った数学的で非人間的な表現を求める、フランク・ステラ、カール・アンドレ、ドナルド・ジャド等のミニマル・アート(最小限芸術)の作品の対比によって紹介いたします。
【3. カオスの中のコスモス、コスモスの中のカオス】
さらに、現代作品の中に見られる「渾沌と秩序」という相反する二つの力がせめぎ合いをかい間見せてくれる作品群として、ジャン・ティンゲリージョン・ケージ中西夏之(なかにし・なつゆき)、若林奮(わかばやし・いさむ)らの作品を展示いたします。
今回の展示作品数は、全部で23点です。

ジョゼフ・コーネル「陽の出と陽の入りの時刻、昼と夜の長さを測る目盛り尺(アナレマ) 」

マーク・ロスコ「ナンバー28」

▲マグダレーナ・アバカノヴィッチ「群衆IV」


■常設展示「人物の表現」 9月3日(火)─10月27日(日)
     「カオス(渾沌)とコスモス(調和)」 9月3日(火)─12月15日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円))、高大生 250円(200円)、小中生 無料 ( )内は20名以上の団体料金。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。
※毎日、午後2時から美術館サポーターによるギャラリートークを行います。