美術館の歩みを展覧会で振り返る(昭和63(1988)年)


『美術館の歩みを展覧会で振り返る』の第5回です。今回紹介するのは昭和最後の年度となる、昭和63(1988)年度です。



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シガ・アニュアル '88 陶・生まれ変わる造形
1988年04月09日─1988年05月15日  開催日数:32日  観覧者数:5,988人
日本の現代美術の様々な局面を、数名の若手作家を中心にテーマ別に紹介する「シガ・アニュアル展」。その第3回展は当時注目を集めていた「現代陶芸」をテーマにした展示でした。花瓶や茶碗のような実用陶器ではなく、オブジェやインスタレーションなど土を用いた多彩な表現に挑んでいる、秋山陽、井上雅之、奥田博土、笠原由起子、堤展子、中村康平、松井利夫、松本ヒデオの8作家を取り上げ、それぞれ1スペースを自由に使って現代陶芸の多種多様な状況を紹介いたしました。なお本展に始まる現代工芸のシリーズはその後、平成5(1993)年度の「染め・織り 生まれ変わる造形」、平成9(1997)年度の「紙 生まれ変わる造形」へと続きました。
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パスキンとエコール・ド・パリ 巴里の詩
−北海道立近代美術館所蔵品による−
1988年05月21日─1988年06月26日  開催日数:32日  観覧者数:10,997人
大原美術館名品展」に続く、他美術館のコレクションを紹介する展覧会です。国内の美術館はこのように、お互いのコレクションを貸し借りし合う展覧会を頻繁に行っています。札幌市にある北海道立近代美術館は、エコール・ド・パリの名で呼ばれる20世紀初頭のパリで活躍した国際色豊かなボヘミアン画家たち、特にジュール・パスキンのコレクションで知られています。本展ではパスキンの油彩・水彩・素描・版画84点を中心に、シャガ−ル、キスリング、藤田嗣治ローランサン、スーチンらエコール・ド・パリの巨匠たちの作品46点を一堂に展示し、20世紀初頭の芸術の都の雰囲気を再現いたしました。
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特別展 近江八景 −湖国風景画の成立と展開−
1988年07月02日─1988年09月04日  開催日数:56日  観覧者数:16,731人
当館では毎年、郷土の美術を紹介する企画展を開催していますが、この年度は過去の「山元春挙展」「野口謙蔵展」「岸竹堂展」のように個々の画家を取り上げるのではなく、滋賀県(近江国)を代表する伝統ある画題である「近江八景」に焦点を絞り、その成立と展開を代表作を通して検証するという意欲的なものでした。近江八景は中国の名所絵「瀟湘(しょうしょう)八景」を元に近世初期に成立したと考えられていますが、本展では近江八景成立前の中世以降の絵図や宗教画に始まり、近世初期の祭礼図、名所絵等、そして近世以後の狩野派、土佐派、円山派の絵師たちによって描かれた近江八景の作例や、近江八景の普及に貢献した浮世絵、工芸品や近代以降の作品など、約80件(うち、重文6件を含む)の美術工芸品を展示いたしました。なおこの展覧会では近代以降の近江八景の展開は控えめにしか紹介しておりませんでしたが、それらは平成5(1993)年度の「現代の近江八景」展で補完されることになりました。
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サム・フランシス展
1988年09月10日─1988年10月16日  開催日数:32日  観覧者数:9,483人
世界の現代美術を紹介する秋の企画展、この年度はアメリカ抽象表現主義とヨーロッパのアンフォルメル運動の両者にまたがって活躍した、カリフォルニア出身のカラフルな抽象画家・サム・フランシスの近作展を開催いたしました。フランシスと言えば禅の思想に大きな影響を受けるなど親日家で、これまでも国内で何度も展覧会が催されてきましたが、本展ではフランシス自身も全面的に企画に関わり、1980年以降の展開に的を絞って、色彩が鮮烈にほとばしる絵画の大作23点を中心に、モノタイプ(1点ものの版画)など合計59点の作品を展示いたしました。
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芸術凧 (アート・カイト)
1988年10月22日─1988年12月11日  開催日数:44日  観覧者数:9,038人
本展は現在活躍中の世界18か国、約100名の美術作家たちが和紙に描いた絵を、日本各地の熟練した凧職人たちの手によって伝統的な和凧に仕立て上げ、完成した「アート・カイト」を館内の様々な空間を活用しながら立体的に展示するという、大阪ドイツ文化センターが企画した極めてユニークな展覧会でした。3年館にわたる世界巡回の、当館はこけら落としの会場でした。参加作家はラウシェンバーグ、ヴンダーリッヒ、ザロメ、ナッシュ、タピエス、アペル、ヴァザルリ、横尾忠則、白髪一雄、菅井汲、靉嘔、堂本尚郎など、世界の第一線で活躍中の作家ばかりでした。また和凧の種類も、江戸凧、土佐凧、浜松凧、六角凧(新渇)、ケロリ凧(愛知)、八日市凧(滋賀)などのほか、作家オリジナルの変形凧も含まれたバラエティ豊かなものでした。日本の伝統芸術である凧と、現代最先端の美術との融合によって生まれた作品が、館内の様々な場所に縦横無尽に展示され、美術館全体が祝祭気分に包まれているような不思議な展覧会でした。
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生誕100年記念 ジャン・コクトー
1989年01月05日─1989年02月12日  開催日数:34日  観覧者数:12,816人
詩、小説、バレエ、映画、演劇、美術など、あらゆる芸術の分野に渡って活躍した20世紀前半のフランスの芸術家、ジャン・コクトーの生誕100年を記念して開催された回顧展で、彼の“美術家”としての側面を紹介しようとするものでした。コクトー自身による油彩・版画・素描・タピスリ・陶器・ステンドグラス等115点の作品に、ピカソら彼の友人たちによるコクトーをモチーフにした作品9点を加え、合計124点を展示しました。いつもの展覧会とは異なり、フランス文学ファンなど幅広い観客層が訪れた展覧会でもありました。
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湖国滋賀と京都画壇
1989年02月18日─1989年03月26日  開催日数:31日  観覧者数:7,895人
この年度の最後を飾る展覧会は、湖国滋賀と、隣接する京都の画壇との関係を、近世・近代美術を中心にさぐるという内容の展覧会でした。古都・京都に隣接する滋賀県(近江国)は古くから岸竹堂、山元春挙など多くの京都画壇の画家を輩出しており、また円山応挙、岸駒、曽我蕭白など、湖国の風景に魅せられ、あるいは近江商人の庇護を受けて、近江国を訪れ絵を残した画家たちも数多く存在しました。本展では滋賀県各地に残された52件の絵画作品を展示・公開し、近世・近代初期の京都画壇に本県が果たした役割を展望いたしました。
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