彫刻の道を歩いてみよう その1

美術館の入口を出てそのまま右(西側)に向かって進むと、石畳の遊歩道がバス停に向かってのびています。この道は「彫刻の道」といって、途中に3つの風変わりな野外彫刻が設置されている遊歩道です。
この彫刻群の存在、あまり知られてはいませんが、どれも非常にユニークな発想で作られた面白い作品ばかりです。今回からこれらの彫刻を順次ご紹介してゆくことにします。

美術館を出て最初に目にとまるのが、上の写真のような傾いた石の柱です。表面に細かい凹凸が刻まれて、淡い赤色で著色されたこの御影石の柱、いったいどうして傾いているのでしょうか? ピサの斜塔を気取ってみたのでしょうか?

実はこの作品、一年でいちばん昼間が長い夏至の日の正午になると、《影が消えてしまう》という面白い作品です。柱の傾きが夏至の日の正午に太陽がある方向(南中点)と完全に一致するように作られているため、影が彫刻自身と重なって見えなくなるのです。

傾きに沿って空を見上げると、はるかその先には夏至の日の太陽があるなんて、なんとも宇宙的なスケールの作品ではありませんか。
今年の夏至は6月21日。影が消える瞬間を、あなたもぜひ確かめに来られませんか?

(写真:山口牧生「夏至の日のランドマーク」 1986年 黒みかげ石、ベンガラ彩色)