秋の常設展示のご案内 その1

8月31日(火)から、常設展示室は新たに秋の展示に衣替えいたしました。その主な内容について、かいつまんでご紹介させていただきます。

展示室1《日本画・郷土美術部門》は、横山大観と仲間たち」(10月31日まで)と題した展示を開催中です。
横山大観は、わが国初の在野の美術団体「日本美術院」の草創期からの重鎮画家で、近代日本画の流れを大きく決定付けた巨匠です。本展示では彼の明治期から大正期の作品をはじめ、彼の元に集った日本美術院の画家たちの作品を一堂に会して、院展の歴史を振り返ります。

主な見どころとしては、まずは当館を代表する名品である速水御舟の「洛北修学院村」(右)と、安田靫彦の「卑弥呼」(左)の2大作品が並んで展示される点でしょうか。40歳で夭折した天才画家・速水御舟の「洛北修学院村」(1918年)は、京都洛北の農村の朝を徹底した細密描写で描いたもの。画面全体を包む神秘的な青緑色の色彩が印象的な作品です。一方の「卑弥呼」(1968年)は歴史画の大家・安田靫彦による戦後期の名作。謎に包まれた邪馬台国の女王・卑弥呼の威厳と神秘性に満ちた姿を、綿密な歴史考証を駆使して壮麗に描いた、新古典主義を代表する大作です。
どちらも当館のコレクションを代表する、いずれ劣らぬ名品ですので、この機会にぜひご観覧下さいませ。

この他にも、タイトルになっている横山大観の、明治から大正期にかけての名品を多数見ることができるのも、ファンには嬉しいところでしょう。初期の名品「帰帆」「月下牧童」や、大正期に描かれた、琵琶湖を題材とした長大な水墨画巻「鳰之浦絵巻」(写真上)など、どれも横山大観の溢れる才能を示す、見ごたえ満点の作品揃いです。

これ以外の主な展示作品としては、速水御舟と同世代の大家・小茂田青樹による畢生の屏風「四季草花図(冬期・夏期)」や、大観にスカウトされて院展に加わった大阪の美人画家・北野恒富が、竹久夢二に代表される大正浪漫の流行の中で描いた「鏡の前」と「暖か」の連作2点。そして安田靫彦の盟友であった前田青邨が、驚いた猫の一瞬の動きを見事に捉えて描いた「猫」などがあります。

その他本展示には、大観の盟友であった菱田春草、下村観山、木村武山らや、大正期の再興院展を舞台に活躍した今村紫紅小林古径、中村岳陵、冨田渓仙らの名作・秀作が勢ぞろいしています。例えば上の写真は、今村紫紅の元に集った通称「目黒派」の画家たちの作品を並べたコーナー(右から、安田靫彦今村紫紅、中村岳陵、山村耕花、牛田ケイ村の各作品。ケイは奚に隹)です。こうした作品の取り合わせから、当時の画壇の空気が漂ってくるような気がしてきませんか。

本展示に合わせて、併設の小倉遊亀コーナーも新たに展示替えいたしました。今回観覧できる展示作品は「受洗を謳う」「胡瓜」「少将滋幹の母 挿絵」「アネモネ」「花屑」「佳器」「紅梅白壺」「夏の客」「家族達」「青巒」「或る御神像」「うす霜」「花と果物」「紅白紫黄」の、計14点です。
芸術の秋に合わせて、ぜひご観覧下さい。


常設展示「横山大観と仲間たち」 8月31日(火)−10月31日(日)

観覧料(共通):一般 450円(360円))、高大生 250円(200円)、小中生 無料
 ( )内は前売および20名以上の団体料金。
※常設展示「赤と黒」(8月31日(火)−12月19日(日))と併せてご覧いただけます。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。