2月2日開催 冬の常設展示 予告

冬期休館が明ける来年2月2日(土)から、企画展と同時に常設展示室も新しい内容でオープンいたします。展示室1では昨年度の新収蔵品をお披露目し、展示室2では同日オープンの企画展示『ハービー・山口写真展』に関連して館蔵品の中から“写真”をフューチャーし、絵画と写真が混交したクロスオーバー的な作品群をご紹介いたします。どちらもお楽しみに。(会期は3月31日(日)まで)


『新収蔵品を中心に』 2月2日(土)─3月31日(日)
《展示室1:日本画・郷土美術部門》では、平成23年度の新しい収蔵品をその関連作品とともに紹介し、滋賀県の新しい財産を皆さまに初お披露目いたします。

中路融人「耀」
今回中心となっているのは、今年平成24年文化功労者に選ばれた日本画家、中路融人(なかじ・ゆうじん)の作品群です。中路は京都市の出身ですが、母の故郷であった滋賀県の風景、特に湖北地方のそれを愛し、静謐で叙情的な画面の中に描き続けています。今回展示される作品は「郷」(1962年)、「冬韻」(1976年)、「瀬田夕映」(1983年)、「雪山」(1993年)、「輝」(1995年)、「耀」(2005年)の、初期作品から近作までを網羅した6点です。

山元春挙「海景図」
山元春挙(やまもと・しゅんきょ)は大津市の出身で、明治から昭和初期の近代京都画壇を支えた重鎮日本画家ですが、今回当館に収蔵されたのは珍しい洋画(油絵)作品です。水を描くのを得意とした春挙の日本画作品とはまた違った興味深い作品で、彼の関心の広さを示すものとして貴重な一作です。

▲島崎雲圃「鮎図」
島崎雲圃(しまざき・うんぽ)は江戸時代の中期から後期にかけて活躍した近江出身の画人で、やはり近江出身で曽我蕭白(そが・しょうはく)の師であった高田敬輔(たかだ・けいほ)の門下生に当たります。後に下野国(現在の栃木県)に移り、小泉斐(こいずみ・あやる)らを育てたことで有名です。鮎は雲圃が特に得意としたモチーフであり、かつ小泉斐らにも受け継がれてゆく、江戸時代中期の画人たちの交流を物語る画題です。
これらの他にも、多数の作品が出展される予定です。


『写真×絵画』 2月2日(土)─3月31日(日)
《展示室2:現代美術部門》では、写真と絵画という異なるジャンルが混交して生まれた、現代の新しい平面作品ばかりを厳選して展示いたします。

ロバート・ラウシェンバーグ「ストーンド・ムーン」より「アリーナII」
ポップ・アートの先駆者となったアメリカのロバート・ラウシェンバーグは、1950年代に流行していた抽象表現主義風の荒々しい画面の中に、写真等の現実世界のイメージを巧みに組み込んで作品を作り、現代の世相と人々の深層心理を暴くように表現する作家です。今回の展示では彼がNASAアメリカ航空宇宙局)の招待を受けて制作した、アポロ11号の月着陸をテーマにした連作「ストーンド・ムーン」の一部などを展示いたします。

▲小枝繁昭「Dine's Red and Flowers #7」
小枝繁昭(こえだ・しげあき)は写真と版画、絵画を混交させたユニークな作品を制作します。被写体(この場合は花瓶の花などと背景のポスター)とレンズの間にガラス板を立て、カメラのファインダーを覗きながらガラス板にアクリル絵具で絵を描き、ガラス板越しに被写体を撮影することで絵画と写真が一体化したイメージを撮影します。さらにその画像を目の粗い版画に刷って写真と絵画の境界を曖昧にし、写真・絵画・版画が渾然一体となった不思議なイメージを生み出します。

▲伊庭靖子「untitled」
伊庭靖子(いば・やすこ)は写真を元に油絵具で写真そっくりの絵画作品を仕上げるスーパー・リアリズムの画家ですが、その写真に一味違う工夫が施されています。被写体を撮影して元になる写真を作る際に、照明や絞りを工夫して光の中に被写体が溶け込むような柔らかで癒し系のイメージで撮影し、その雰囲気をそのまま絵画に写し取るのです。当然、本来の被写体の雰囲気とは大きく異なる作品が仕上がります。写真イコール現実そのままの写し、という図式がここで崩壊し、彼女の作品は写真を元にしていながらも、彼女の視覚、彼女の世界観を大きく反映した独自のイメージに生まれ変わっているのです。
これらの他にもポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホルの代表作「マリリン」や、名画の登場人物に扮した自写像を撮ることで有名な森村泰昌(もりむら・やすまさ)がラファエル前派の名画に扮した作品5点など、内外のユニークな作品を多数ご紹介いたします。


常設展示「新収蔵品を中心に」「写真×絵画」 2月2日(土)−3月31日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円)、高大生 250円(200円)、小中生 無料
( )内は20名以上の団体料金。

※企画展「ハービー・山口写真展」(2月2日(土)−3月31日(日))の観覧券で、常設展もご覧いただけます。