常設展『新収蔵品を中心に』の見どころについて

現在休館中の当館は2月5日(土)から再オープンいたします。これに合わせて2月5日(土)からさっそく、新しい常設展示「新収蔵品を中心に」と「アメリカ★アメリカ★アメリカ」が始まります。ここではその内容についてかいつまんでお知らせいたします。まずは日本画・郷土美術部門の展示「新収蔵品を中心に」から。

当館は「日本美術院を中心にした近代の日本画」「郷土滋賀県ゆかりの美術」「戦後アメリカと日本を中心にした現代美術」の3つの方針に基づいて、作品の収集を行っています。今回の展示「新収蔵品を中心に」はその名の通り、平成21・22年度に寄贈・寄託などにより新しく収蔵された、日本画・郷土美術部門の作品を展示いたします。
展示作品は全部で27点。うち21点が新収蔵品であり、もちろん当館初公開となります。

上の作品は小倉遊亀(おぐら・ゆき)の弟子であり、院展で活躍中の日本画家、内藤和子(ないとう・ともこ)の「憩」です。内藤和子はこのように、中近東やヨーロッパに取材したエキゾチックで情感溢れる作品を数多く描いており、豪奢なペルシャ絨毯を敷いた上で憩うヴェールを被った女性を描いたこの作品にも、作者の異国趣味が濃密に現れています。本展では同じ作者の、キリスト教寺院に取材した「秘蹟」も展示されます。

上の写真は、滋賀県近江八幡市出身で院展近藤浩一路(こんどう・こういちろ)に水墨画を師事した、茨木杉風(いばらき・さんぷう)の「水辺夏童(みずべかどう)」。丸木橋の上から、アヒルが泳ぐ夏の小川に飛び込む子どもたちを描いた、爽やかでほほえましい作品です。茨木杉風は軽妙洒脱な作風を持ち味とする文人画家で、伝統的な文人画に現代的な魅力を加味した独自の世界を展開しています。本展示ではこの作品の他に、「湖上遊舟」「湖上行舟」など琵琶湖に取材した爽やかな作品が展示されます。

上の作品は大津市在住で日展会友の日本画家、仁志出高福(にしで・こうふく)が、病気からの回復後に京展に出品して京都新聞社賞を受賞した作品「窓の向こうに消えた冬」です。長い冬を乗り越えた末にやっと婚礼を迎えることができた花嫁の喜びを、色調を抑えた上品なタッチで初々しく格調高く描いた作品です。病魔との闘いに勝利した自らの喜びが、花嫁の姿に重ね合わされているのかも知れません。

上の作品は甲賀市信楽町在住で滋賀県指定の無形文化財である5代上田直方(うえだ・なおかた)の信楽焼による作品「信楽宝塔香炉(しがらき・ほうとう・こうろ)」です。滋賀県に伝わる信楽焼奈良時代からの歴史があるとされる日本六古窯のひとつで、素地の荒い素朴な手触りと暖かみのある火色の発色、自然釉による独特の焦げの味わいなどに特徴があります。上田直方は伝統的な信楽焼の味わいにこだわりつつ、洗練された美しさを追求し、独特の茶陶の世界を作り上げてきました。仏教の宝塔を模したこの香炉にも、独特の粋(いき)の世界が見事に現れています。本展示ではこの作品の他、全部で5点の作品が展示されます。

今回ご紹介した作品以外にも、大津市出身の日本画の巨匠・山元春挙(やまもと・しゅんきょ)の「柳塘寒月図(りゅうとうかんげつず)」、美人画の大家・上村松園(うえむら・しょうえん)の「ふり袖」、院展の巨匠で小倉遊亀(おぐら・ゆき)の師でもある安田靫彦(やすだ・ゆきひこ)の「宝の月」と「観世音菩薩像」、初期院展の重鎮作家・西郷孤月(さいごう・こげつ)の「月夜山水図」など、さまざまな新収蔵品を公開いたします。ぜひ2月5日の再オープンの日を、楽しみにしていてください。
なお「小倉遊亀コーナー」の作品も、本展示に合わせて展示替えとなります。


■常設展示「新収蔵品を中心に」 2月5日(土)−4月3日(日)
観覧料(共通):一般 450円(360円))、高大生 250円(200円)、小中生 無料
 ( )内は20名以上の団体料金。
※常設展示「アメリカ★アメリカ★アメリカ」(2月5日(土)−4月3日(日))と併せてご覧いただけます。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。
※毎日、午後2時から美術館サポーターによるギャラリートークを行います。