「わたし流・作品スケッチ大会」の後半2回分を開催しました


常設展示室の作品を自由に模写し、ユニークな作品に仕上げてもらうイベント「わたし流・作品スケッチ大会」。その後半を、7月21日(土)・22日(日)の2日間にわたり開催いたしました。21日は22名、22日は20名の子どもたちが参加し、思い思いの名画を楽しいオリジナルの作品に生まれ変わらせてくれました。
これらの作品は8月7日(火)から12日(日)まで、ギャラリー展示室(入場無料)において展示し、優秀作品は12日(日)に表彰いたします。ぜひ皆さまも、子どもたちのフレッシュな感性がどのように美術作品を捉え、どのように新しい作品へと生まれ変わらせたのか、ご観覧いただきたいと思います。

さて本イベントの模様は先週もこのブログでご紹介いたしましたので、今回は趣向を変えて、この4日間のイベントにおいて、常設展示室のどの作品が子どもたちに人気があったのか、ベスト5をご紹介してゆきたいと思います。


【第5位】


人気第5位は、現代作家・山口晃(やまぐち・あきら)の「厩図(うまやず)2004」。日本美術の伝統的な画題である「厩図」をもとに、現代的な風景と合体させて生まれた奇妙な作品です。絵の上下に古風な雲がたなびき、烏帽子をかぶった人物や、頭にちょんまげを付けた人物などがいて、一見、昔の日本の風景のように見えますが、よく見ると家の屋根には煙突があり、壁にはエアコンの室外機があり、現代の小学生とお茶汲みロボットがお茶を運んでいたりと、現代の風景が何の違和感もなく絵の中に溶け込んでいます、そして厩の中に繋がれている馬も、バイクと合体したサイボーグのような馬ばかり。この奇想天外さと、馬バイクのかっこ良さが子どもたちの心に響いたのか、特に男の子たちが画面の中に馬バイクをこっそり描き入れているケースが目立ちました。


【第4位


続く第4位は、幕末から明治期に活躍した京都画壇の先駆者・岸竹堂(きし・ちくどう)の「三社図」。奈良県春日大社のシンボルである鹿、三重県伊勢神宮を表わす朝日、そして京都府石清水八幡宮を象徴する鳩の群れという3つのシンボルを用いて、絵を見るだけで3つの有名な神社にお参りしたような気分に浸れるという贅沢(?)な作品です。子どもたちはこれらが神社のシンボルかどうかには関係なく、巨匠・竹堂による鹿と鳩の生命観溢れる描写、そして海から昇る朝日の雄渾さに惹かれてこの作品をスケッチしていたもようです。特に右隻に描かれた鹿の親子は、子どもたちによって様々なシチュエーションを与えられ千差万別の作品に生まれ変わっていました。


【第3位】


第3位は日本を代表するオプティカル・アートの作家、オノサト・トシノブの作品群でした。今回展示した4点の油絵と4点の版画は、いずれも昨年度当館に寄贈いただいたばかりの初公開作品ばかりです。見つめていると目がチカチカしてくる画面ばかりですが、よく見ると作品の中にだまし絵のように様々な幾何学図形が隠されているあたりが、子どもたちの関心を引いたものだと思われます。8点の中でも特に目玉を思わせる模様の「A.S.-1」が大人気でした。


【第2位】


第2位はガンで夭折した女流日本画家・三橋節子(みつはし・せつこ)が遺される我が子のために描いた「近江昔話・雷獣(らいじゅう)」。滋賀県に伝わる伝説を元にした創作童話の1シーンとして描かれた幻想的な作品です。絵の中央にいる赤い獣は、口から稲妻を吐いて生き物を殺す悪い妖怪、雷獣です。お話の中では節子の息子と同じ名前を持つ「くさまお」という少年によって懲らしめられるこの妖怪に、子どもたちは野生の迫力や強さを見たのでしょうか、かっこいい主人公格として特に男の子たちに受け入れられ、楽しい作品に生まれ変わりました。


【第1位】


そして人気ナンバーワンの作品は、幕末から明治初頭に活躍した京都の円山派の大家・森寛斎(もり・かんさい)が、一年十二ヶ月の動植物を12幅の掛軸に描いたいわゆる「月次絵(つきなみえ)」の作品、「十二ヶ月図」でした。残念ながらこの作品は8月だけが欠損していて完全な十二ヶ月図にはなっていませんが、それでも現代の子どもたちにも通じる豊かな季節感と、動植物描写の巧みさがおおいに受け入れられたのか、特定の一幅だけを取り上げたものから複数の画面を合成したものまで、様々な作品に変身いたしました。特に鯉を描いた「7月」が今の季節ゆえか、特に子どもたちに取り上げられることが多かったもようです。

今回取り上げたもの以外にも、様々な作品が子どもたちの手によって楽しい作品に生まれ変わりました。それらはぜひ、来月ギャラリーで展示される作品展にお出でいただき、皆さんの目でお確かめいただきたいと思います。


『わたし流・作品スケッチ大会作品展』
◆会 場:滋賀県立近代美術館ギャラリー
◆会 期:8月7日(火)─8月12日(日) 会期中無休
◆入場料:無料
◆備 考:8月1日(水)・2日(木)開催のワークショップ「ふしぎの森と小鳥をつくろう」の完成作品も同時に展示いたします。