たいけんびじゅつかん「さくらで染める」を開催しました。

たいけんびじゅつかん「さくらで染める」を4月21日(日)に開催し、大人と子ども合わせて33人の方に参加いただきました。

今回のたいけんびじゅつかんは、企画展「装いとしつらえの四季―志村ふくみの染織と日本画・工芸品名品選」と関連したワークショップです。この展覧会では、四季の美しさをテーマに、美術館が所蔵する作品から選んだ作品を春夏秋冬に分けて、志村ふくみさんの染織作品を中心に日本画や工芸の作品を展示しています。
志村ふくみさんは、草木染の糸を使う染織家で、紬織の人間国宝に認定された方です。
今回のワークショップでは、志村ふくみさんのように自然の植物の皮や枝から作った染液(桜)でハンカチを染める、草木染めを体験し、自然の奥深さを感じてもらうことが目的です。

今回は時間の関係で染液は、こちらで準備しました。
桜の染液は、滋賀のヤマザクラ奈良のソメイヨシノの2種類で、桜の花が咲く前の枝を使用しました。この時期の桜の枝で染めるのが一番良いとされているためです。


●染液の作り方
アルカリ水を沸騰させ、そこに桜の皮や枝を細かく割ったものを加え、20分間煮出しました。(桜の染液を作る場合、アルカリ水を使う方がより発色がよくなるため。)

↑さくらの枝から色を煮出している様子。どんな色が出てくるのかな〜??

↑この模様はどうやって作るでしょうか〜?


絞り模様の作り方には、みなさんから良いリアクションがいただけました!
輪ゴム、竹串、三角形や四角形の木材、洗濯バサミ、ビー玉、おはじきを使って各々
模様を作りました。洗濯バサミは水玉模様のようで、かわいい!と女の子に好評でした。

↑絞り模様をつけたハンカチを、さくらの染液に30分つけます。


↑30分後、取り出したハンカチから絞りに使った輪ゴムや洗濯バサミなどを外して、水でよく洗います。

↑媒染液にハンカチを30分つけます。


●媒染液とは??
色止めをし、色落ちを防ぐために必要な液体です。今回は消石灰を水に溶かし、沈殿させ、その上澄み液を使用しています。

30分後、媒染液から取り出し、水で洗います。

↑脱水機(野菜用!)で水分をとばします。ぐーるぐーる楽しいね!


↑乾燥中。キレイな絞り模様が出ていますね!

この後、参加者全員で企画展「装いとしつらえの四季」を当館学芸員の解説とともに鑑賞し、志村ふくみさんの着物の豊かな色彩美、そして、近代絵画の巨匠たちによる掛軸、屏風、額装の作品と、陶芸、竹工芸から四季折々の自然の美を堪能しました。


↑手前:志村ふくみ「匂蘭」1987  奥:志村ふくみ「紅襲(桜かさね)」1976

企画展鑑賞後は自分で染めたハンカチをみなさんにお持ち帰りいただきました。
みなさん思った通りの色や模様が出たでしょうか?自然のものは簡単に操作できないということ、志村ふくみさんがどれだけ丹精を込めて、時間をかけて作品作りをしているかを実感されたのではないかと思います。

ちなみに、今回染めに使用したハンカチは事前に豆乳に浸して処理をしています。これは、自然の染料で染める場合、豆乳に含まれるたんぱく質の働きによって色を定着させやすくします。この処理をしないと色が定着せず、淡くなってしまいます。
また、植物は切る時期のよって染液の色が違います。同じ桜の枝から、同じ方法で染液を作っても、毎回違う色になります。それは、桜はたくさんの色をためこんでいるからです。同じ色を出すことはほぼ不可能とも言われています。


●お知らせ
志村ふくみさんの新刊が出ています!


ミュージアムショップには他にも志村ふくみさん著の本が多数並んでおりますので、
染織に興味をもたれた方、読んでみてはいかがでしょうか?