秋の常設展示のご案内 その2

8月31日(火)から新たに始まった秋の常設展示。その主な内容について紹介させていただくコーナーの第2弾です。前回は日本画の展示室をご紹介いたしましたが、今回は現代美術の展示室です。

展示室2《現代美術部門》ではただ今、赤と黒(12月19日まで)と題した展示を開催中です。「赤と黒」と言えばフランスの文豪スタンダールの小説を連想しますが、現代美術の世界でも赤と黒という色彩は、その強烈さ、重厚さ、感情に訴求する力などのためか、作品に好んで使われる色でもあります。今回の展示では収蔵品の中から赤と黒、それぞれの色を基調としたモノクローム(単色)作品ばかりをセレクトし、展示室を2つに分けて片方に「赤」、もう片方に「黒」を基調とした作品を展示するという、ユニークな構成でお送りしています。

黒の展示室では、戦後ヨーロッパを代表する作家アントニ・タピエスの「黒い空間」がいちばん目を引きます。砂を混ぜた黒い絵の具が一面に塗りこめられた、独裁政権と相次ぐ内戦に苦しめられた戦後スペインの自画像のような重苦しいイメージの作品です。また吸い込まれそうな深い黒で描かれた瞑想的なアド・ラインハートの「トリプティック」をはじめ、フランク・ステラの「ブラック・シリーズII」、リチャード・セラの「床に立つ横長の長方形」といった、1950年代の色面絵画から70年代ミニマル・アートへと向かうアメリカ現代美術の流れが、黒のモノクローム作品の連続によって見事に浮かび上がっているのも興味深いところです。

一方、赤の展示室では、日本における抽象絵画の先駆者・斎藤義重による、合板を電動ドリルで削って作った「作品12」、1960年代の現代美術界を席巻した具体美術協会を代表する巨匠・白髪一雄による足で描いた作品「地靈星神醫」、60年代末のミニマル・アートを代表する作家・桑山忠明の「無題」、孤高の版画家・加納光於がデカルコマニー技法を用いて描いた油彩大作「囲いに沿って」など、日本の現代美術を代表する重鎮作家たちの名作が多数展示されています。
海外作家では、キャンバスの表面にナイフで切れ目を入れ、絵画と彫刻のはざまの新しい空間を産み出したイタリアのルチオ・フォンタナの代表作「空間概念」が目を引きます。

その他今回の展示では、アンディ・ウォーホル、ジム・ダイン、一圓達夫、福岡道雄、の展示作家は、村上友晴、横溝秀実、五十嵐彰雄、山崎亨ら、内外の作家たちによるユニークな表現の数々をお楽しみいただけます。

前回ご紹介した日本美術の展示同様、今回の現代美術の展示も、当館の収蔵品のエッセンスを味わうのに恰好の内容となっています。芸術の秋に合わせて、ぜひともご観覧下さい。


常設展示「赤と黒 8月31日(火)−12月19日(日)

観覧料(共通):一般 450円(360円))、高大生 250円(200円)、小中生 無料
 ( )内は前売および20名以上の団体料金。
※常設展示「横山大観と仲間たち」(8月31日(火)−10月31日(日))と併せてご覧いただけます。
※企画展の観覧券で常設展も観覧できます。